炭水化物摂取を控え、エネルギー源を糖からケトン体にシフトさせようとする「ケトン体ダイエット」は、「痩身」あるいは「糖尿病予防」などへの期待が喧伝されている。しかしランダム化比較試験(RCT)メタ解析の結果、肥満や糖代謝には確かに好影響を与える一方、脂質代謝への一部増悪作用も確認された。中国薬科大学のZixuan Wang氏らが7月15日、American Journal of Clinical Nutrition誌で報告した。
なおケトン体ダイエットに関連し、血中ケトン体高値そのものがCV高リスクの予知因子だとする知見も、昨年3月、米国多人種コホート観察研究から報告されている [Shemesh E, et al. EHJ] 。
メタ解析の対象となったのは、「ケトン体ダイエット」と「心血管系疾患」の関係を検討したRCT 27報(1278例)である。解析計画は事前に、PROSPEROデータベースで公開されている(CRD42023491853)。これらを対象に「ケトン体ダイエット」が「血清脂質と糖代謝」と「血圧と体重」(追加解析)に与える影響を検討した。
・血清脂質と糖代謝
その結果、ケトン体ダイエット群は対照ダイエット群に比べLDL-Cの有意な上昇を認めた(群間差:13.5 mg/dL)。一方、トリグリセライドは17.7 mg/dLの有意低値、またHDL-Cは6.2 mg/dLの有意高値だった(ただしいずれもバラツキの指標である I2 は70%超の高値)。
糖代謝への影響は一貫しており、ケトン体ダイエット群で血糖値は4.0 mg/dLの有意低値、インスリン濃度も8.32 pmol/Lの有意低値だった(こちらもI2は70%超)。
・血圧と体重
体重はケトン体ダイエット群で対照ダイエット群に比べ2.59 kgの有意低値、BMIも同様に1.59 kg/m2の有意低値となっていた(I2:80%以上)。
血圧も拡張期血圧は、ケトン体ダイエット群で1.41 mmHgの有意低値だった(I2:49%)。
Wang氏らは、ケトン体ダイエットが代謝に与える全般的な好影響を認めながらも、LDL-C増加には注意が必要だと考えているようだ。
本研究に開示すべきCOIはないとのことである。