【質問者】藤野紀之 東邦大学医学部内科学講座循環器内科学分野准教授
【自分が刑事になったつもりで,「状況証拠」と「現行犯逮捕」を区別して考えることが重要である】
通常は少量のミダゾラムでの軽鎮静,フェンタニルでの鎮痛下でEPSを施行します。EPSのカテーテル配置と診断の手順は,従来の方法を踏襲します。これは,先人たちが何十年もかけて磨き上げた,効果的かつ無駄のない方法だからです。
洞調律時での心房間隔,心房-ヒス間隔,ヒス-心室間隔,QRS幅を測定の後,心室の連続刺激,心室期外刺激へと進めます。その際に心房の再早期興奮部位が右房,左房側であった場合,もしくは減衰伝導特性が弱い場合は,副伝導路の存在を疑い,傍ヒス束ペーシングを追加します。また一見,室房伝導がない症例では,室房伝導を顕在化させるために,基本刺激を心房と心室の同時刺激とし,期外刺激のみ心室刺激とします。
続いて心房から同様に,連続刺激,期外刺激を行います。その際に,QRSが変化しないことを確認して,順行性の減衰伝導特性のある副伝導路を否定しつつ,心房-ヒス間隔の変動を評価し,房室結節の減衰伝導特性およびジャンプアップ現象を評価します。ここまでは「状況証拠集め」であり,これらの所見だけでアブレーションすることはありません。以上の過程で,頻拍が誘発されるようであれば,頻拍の鑑別診断へと移ります。誘発されないようであれば,イソプロテレノール投与下で同様のEPSを施行します。
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