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【文献 pick up】80歳以上のAF例に対するエドキサバンとアピキサバンは安全性に差?―英国観察研究/Stroke誌

宇津貴史 (医学レポーター)

登録日: 2024-03-29

最終更新日: 2024-03-29

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わが国で頻用されているエドキサバンとアピキサバンの有効性と安全性を、80歳以上の非弁膜症性心房細動(AF)例で比較した英国観察研究が3月21日、Stroke誌に掲載された。著者はカナダ・ユダヤ総合病院のRichard Chiv氏ら。虚血性イベント抑制作用は両剤間に差を認めない一方、出血リスクはアピキサバンで有意に低いという結果だった。なお近年、AF例の5割強は75歳以上と報告されている[De Caterina R, et al. 2021]。

【対象】

解析対象とされたのは、2010年から21年にかけてAFと初めて診断された後にエドキサバンまたはアピキサバンを処方された80歳以上の4万7242例である(エドキサバン:7251例、アピキサバン:3万9991例)。英国かかりつけ医データベース(CPRD)より登録から1年以上経過した例を抽出した。平均年齢は85.9歳、女性が53.0%を占めた。

【方法】

これら4万7242例を対象に、エドキサバン群とアピキサバン群間で「虚血性イベント」(脳梗塞・TIA/全身性塞栓症)と「要入院出血」(大出血)のリスクを比較した(1次評価項目)。加えて「総死亡」「虚血性イベント+消化管出血・頭蓋内出血」リスクも比較した(2次評価項目)。比較にあたっては両群の背景因子を揃えるべく、傾向スコアを用いた層別化と逆確率重みづけを実施した。観察期間中央値はエドキサバン群:255262日、アピキサバン群:317~322日だった。

【結果】

・虚血性イベント

その結果、「虚血性イベント」発生率に有意差はなかった(エドキサバン群:20.41000人年 vs. アピキサバン群:19.21000人年)。

・大出血

一方、「要入院出血」リスクはエドキサバン群で有意に多く、ハザード比(HR)は1.4295%信頼区間[CI]:1.26-1.61)だった。発生率はエドキサバン群:45.61000人年 vs. アピキサバン群:31.21000人年である。

・虚血性イベント+消化管・頭蓋内出血

同様に「虚血性イベント+消化管・頭蓋内出血」もエドキサバン群でリスクは有意に高かった(HR1.2195%CI1.07-1.3844.3 vs. 36.11000人年)。

・総死亡

ただし総死亡リスクは、両群間に有意差を認めなかった(エドキサバン群HR1.0495%CI0.96-1.12)。これらの結果は感度分析においても同様だった。感度分析では服薬状況評価の変更、あるいはIntention-to-Treat解析などを実施した。また亜集団解析の結果、上記結果は「90歳上下」「性別」「フレイルの有無」「DOAC用量の高低」を問わず一貫していた。

【考察】

Chiv氏らは、観察研究という性質に鑑み、今回の結果が何らかの未調整因子の影響を受けている可能性を否定しないものの、結果の信頼性には自信を持っているようである。

本研究に対する外部からの資金提供はない。また筆頭著者、責任著者には申告すべき利益相反はないとのことである。

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