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【識者の眼】「緊急避妊薬の試験販売開始」稲葉可奈子

No.5204 (2024年01月20日発行) P.53

稲葉可奈子 (公立学校共済組合関東中央病院産婦人科医長)

登録日: 2024-01-10

最終更新日: 2024-01-10

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2023年11月28日に、緊急避妊薬の薬局での試験販売が始まりました。同年2月、わたしがこちらで寄稿を始めさせて頂いた初回に取り上げたのが「緊急避妊薬のOTC化」でした。これまでの経緯についてはそちらもご覧下さい(No.5157)。

なぜいきなりOTC化するのではなく、試験販売を行うかというと、緊急避妊薬へのアクセスがよくなることでメリットがあるのは当然ですが、悪用されるケースも想定されているためです。まずは限られた範囲でトライアルしてみて、トラブルがあれば対策をしっかりとってから本格運用へ、というのが試験販売の狙いです。

試験販売は、日本薬剤師会が調査研究として全国145の薬局で(各都道府県2〜3店ずつ)、価格は7000〜9000円程度、対象者は16歳以上(18歳未満は保護者の同意が必要)、16歳未満は医療機関へ紹介、となっています。

これについて、対象薬局数が少なすぎる、価格が高い、若年層が買いにくい、といった批判がみられます。

小規模で試験販売とはいえ、薬局数が少なすぎるのは確かにその通りで、あまりに小規模だと、起こりうるトラブルを感知できない可能性があります。

年齢制限については、今回の試験販売が「調査研究」として行われているため、同意の問題から年齢制限が設けられています。

ただ、若年の望まない妊娠を防ぐというのは重要な課題ですので、本運用では16歳未満も対象となることを期待します。しかし、薬局で買えないからといって手に入らないわけではなく、受診すればこれまで通り処方されます。

価格については、緊急避妊薬自体が、1回1錠内服するだけですし、たくさん使われる薬ではないので、単価が高くなってしまうのは市場原理としていたし方なく、薬価自体を安く、というのは無理があります。

問題は、避妊も中絶も自費である点で、この点についての制度の見直しも進んでほしいと願っています。

今回の試験販売は大きな第一歩です。ここから本運用へ向けての調整に必要以上に時間をかけることなく、的確かつスムーズに移行することを期待します。

いざというときに緊急避妊薬で妊娠のリスクを下げられる、というのは大変心強いことなのですが、毎回緊急避妊薬で避妊をし続けることはできないですし、普段からより確実な方法で避妊をしておくという選択肢もこの機会に知られてほしいと思います。

稲葉可奈子(公立学校共済組合関東中央病院産婦人科医長)[緊急避妊薬販売に係る環境整備のための調査事業]

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