10月30日、JAMA Neurology誌に「軽症(Nondisabling)脳梗塞には抗血小板薬併用で十分」と題する論説が掲載され、話題となっている。原著者のSherri A. Braksick氏(メイヨークリニック、米国)らは、本年6月に報告されたランダム化比較試験(RCT)"ARAMIS"の結果を受け、軽症脳梗塞急性期治療薬としては血栓溶解療法よりも抗血小板薬2剤併用(DAPT)が好ましいのではないかと結論している。
そこでARAMIS試験を、原著論文をもとに若干詳細に紹介したい。
ARAMIS試験の対象は、中国在住で脳梗塞発症後「NIHSS≦5」だった760例である。
発症時「mRS≧2」は除外されている。
年齢中央値は64歳、女性が約30%を占めた。
これら760例を脳梗塞発症後4.5時間以内に、抗血小板薬2剤併用を開始する「DAPT」群と血栓溶解薬静注を始める「IVT」群にランダム化した。1次評価項目は90日後における「mRS:0~1」例の割合である。
観察中の盲検化はされていない(ただし評価項目検証者は盲検化)。
DAPT群のレジメンは「クロピドグレル300mg+アスピリン100mgをローディング後、それぞれ75mg/日と100mg/日を10~14日継続」、IVT群は「アルテプラーゼ0.9mg/kgの10%急速投与後、1時間静注」とした。アルテプラーゼはわが国推奨用量の1.5倍である。
なお試験治療終了後は両群とも、ガイドライン準拠治療を実施・継続した。
解析方針はIntention-to-Treat。しかし実際に解析されたのは、ランダム化760例中の719例のみである。ランダム化後に同意を撤回した36例など合計41例は、除外されている。
またDAPT群の23%、IVT群の17%では、割り付け群と逆の治療が実施された(クロスオーバー)。
なおこれら719例で比較しても、両群間の背景因子に大きな差はない。
ランダム化時のNIHSS中央値は両群とも「2」、75%弱が「mRS:0」(無症候)だった。
その結果、ランダム化90日後に「mRS:0~1」だった例の割合はDAPT群93.8%、IVT群91.4%となり、有意差はなかった。
同時に、DAPT群のIVT群に対する非劣性が確認された(P=0.0002)。
この結果は、実際に受けた治療群で比較する"as treated"解析でも同様だった。
対照的に安全性は、「症候性頭蓋内出血」発生率こそDAPT群で0.3%、IVT群0.9%で有意差を認めなかったものの、「それ以外の全出血」はDAPT群で有意に少なかった(1.6% vs. 5.4%)。
本試験の原著者であるHui-Sheng Chen氏(Northern Theatre Command総合病院、中国)らは、両群間の転帰に差を認めなかった要因として、「高いクロスオーバ率」に加え、「天井効果」が働いた可能性を挙げている(デザイン論文ではDAPT群「mRS:0~1」達成率を65%と想定)。
本研究は中国行政機関から資金提供を受けて実施された。アスピリンとクロピドグレルはShenzhen Salubris Pharmaceuticals Co., Ltd.から無償提供を受けた。