株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

■NEWS 【欧州糖尿病学会(EASD)】1型DM例では心筋梗塞後転帰の経年的改善を認めず―スウェーデン大規模観察研究

登録日: 2023-10-16

最終更新日: 2023-10-16

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

過去15年間に、2型糖尿病(DM)例では心筋梗塞後の生存率が経年的に改善していたのに対し、1型DMではそのような改善が認められないことが明らかになった。102日からドイツ・ハンブルクで開催された欧州糖尿病学会(EASD)第59回学術集会において、スウェーデン・カロリンスカ研究所のLynn Wedén氏が報告した。1型、2型DM間のこの差が生じた原因は明らかでないという。

【対象と方法】

今回解析対象となったのは、スウェーデン在住で200610年の間に急性心筋梗塞をきたし、DM合併の有無が明らかだった294018例である。

このうち243170例にはDM診断歴がなく、2527例に1型DM、4万8321例に2型DMの診断歴があった。

これら3群間で心筋梗塞後死亡率の経時的変化を比較した。

平均年齢は「1型DM」群が62.0歳で、「2型DM」群の75.0歳、「非DM」群の73.2歳に比べて若い傾向にあった。女性の割合は「1型DM」群では43.6%で、「2型DM」群(38.1%)や「非DM」群(38.4%)に比べて高い傾向を認めた。

一方、DM罹患期間は「2型DM」群が12.9年だったのに対し、「1型DM」群は42.9年だった。HbA1c平均値は「2型DM」群の7.3%に対して「1型DM」群は8.4%だった(検定なし)。

心筋梗塞の内訳は、「1型DM」群と「2型DM」群ではST上昇型(STEMI)がともに約30%だったのに対し、「非DM」群では38%だった。

【結果】

心筋梗塞発症後「30日間死亡率」の経年的推移を比較すると、「06~08」年から「18~20」年にかけて「非DM」群では0.48%の低下、「2型DM」群でも0.33%低下していたのに対し、「1型DM」群では有意な変化は認められなかった(0.18%の低下傾向にとどまる)。

「1年間死亡率」の経年的変化も同様で、「非DM」群の0.65%、「2型DM」群の0.50%の有意低下と対照的に、「1型DM」群では0.17%の低下傾向(NS)のみだった。

「心血管系死亡」「重篤心血管系イベント」の経年的推移を比較しても同様の結果だった。

【考察】

質疑は1型DMのみ心筋梗塞後転帰の経年的改善が認められなかった点に集中した。

Wedén氏によれば、心筋梗塞発症後のスタチン、アスピリン服用率は「1型DM」群と「2型DM」群の間に差はなく、また「非DM」群に比べると高かったという。

さらにSGLT2阻害薬服用率は「18~20」年時点でも「2型DM」群で約6%、「1型DM」群で2%強のみであり、この差が死亡率改善の違いにつながったとは考えられないと同氏は述べた。事実、SGLT2阻害薬の臨床応用前から「2型DM」群の死亡率減少は始まっていたという。

この点はGLP-1RAに関しても同様とのことだ。

また脂質についてはLDL-Cの管理目標値達成率に「1型DM」群と「2型DM」群の間で差はなかった。

しかしトリグリセライド、HDL-Cについてのデータは今回提示されず、フロアからは「1型DM」群と「2型DM」群の間ではそれらの管理状況に差があったのではないかとの指摘があった。

Wedén氏自身は「1型DM」群の「HbA1c高値」、またそこから想起される相対的に大きな血糖変動が悪さをしていると考えているようだった。

Wedén氏に開示すべき利益相反はないという。研究に対する資金提供の有無には言及がなかった。

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

もっと見る

関連求人情報

関連物件情報

もっと見る

page top