80歳以上でも直接経口抗凝固薬(DOAC)を添付文書準拠用量で服用していれば、フレイルがあっても有効性・安全性は非フレイル例と差はないようだ。イタリア・パドバ大学のGentian Denas氏らが10月2日、JACC Advances誌で報告した。
これまでの観察研究からは、フレイル例に対する経口抗凝固薬(OAC)処方回避傾向や、フレイル例における低いOAC服用率が報告されている。
今回解析対象となったのはイタリア在住で80歳以上の、(1)心房細動(AF)と新規診断され、または(2)OAC適応のある機械弁置換を受け、承認用量のDOACを服用していた176例である。不適切低用量服用例は除外されている。
平均年齢は85歳、57%が女性だった。
これら176例をSHARE-FIスコアを用いて「フレイル」「プレ・フレイル」「非フレイル」の3群に分け、「脳卒中/全身性塞栓症・大出血・要対応非大出血・死亡」の発生率とリスクを比較した。
・フレイルの割合
全体の32.9%が「フレイル」、19.8%が「プレ・フレイル」、47.2%が「非フレイル」だった。
CHA2DS2-VAScスコア平均値は順に、4.8、4.3、4.1となった。
・重篤イベント
約1.5年間(259人年)の観察期間中、49例が「脳卒中/全身性塞栓症・大出血・要対応非大出血・死亡」をきたした。
これらイベント発生率は「フレイル」群(18%)、「プレ・フレイル」群(10%)、「非フレイル」群(21%)で、群間に有意な差を認めなかった。
また「非フレイル/プレ・フレイル」群と比べた「フレイル」群における発生率比(IRR)も1.2(95%信頼区間[CI]:0.6-2.2)で有意差を認めなかった。
「大出血」「要対応非大出血」も同様に、「フレイル」群におけるIRRは「非フレイル/プレ・フレイル」と有意差はなかった。「脳卒中/全身性塞栓症」も同様である。
ただし「死亡」IRRは「フレイル」群で4.6(95%CI:1.3-20.3)の有意高値だった(発生率は「フレイル」群:15.5%、「プレ・フレイル」群:8.6%、「非フレイル」群:1.2%)。
なお死亡した13例中、心血管系疾患死は2例のみ。8例は呼吸器疾患、3例は悪性腫瘍による死亡だった。
本試験はDaiichi Sankyo Italyから資金提供を受けた。