僧帽弁狭窄症は,僧帽弁口が狭小化し,左房から左室への流入が障害されて心拍出量が減少,左房圧が上昇することで肺静脈圧が上昇し,心不全症状を呈する。原因として,従来から考えられているリウマチ熱による交連部の癒合を特徴とするリウマチ性僧帽弁狭窄は減少している。一方,高齢に伴う弁輪石灰化などの変性による非リウマチ性僧帽弁狭窄は増加している。
心不全による労作時呼吸困難をきたす。左房内血栓による全身塞栓症で発症することもある。
聴診でⅠ音亢進,Ⅱ音に続く僧帽弁開放音,拡張期ランブルを聴取する。重症化すると僧帽弁開放音は減弱していく。
心電図ではV1誘導のP波が二相性を呈し,しばしば心房細動を認める。胸部X線では左房拡大に伴う心陰影拡大をきたし,進行例では肺うっ血を呈する。心エコー図検査では弁尖が肥厚・輝度上昇・石灰化をきたして可動制限を認め,前尖が拡張期ドーミングする。交連部が癒合した短軸像ではfish mouse様となる。また,弁尖の肥厚・輝度上昇・石灰化が腱索や乳頭筋まで及ぶこともある。僧帽弁狭窄症の診断,重症度および血行動態評価には心エコー図検査が有用である。
治療方針は心不全症状の有無と心エコー図検査による重症度評価により決定する。心エコー図検査による重症度評価は,僧帽弁弁口面積,拡張期左房-左室圧較差で判断する。心臓カテーテル検査でも左房-左室圧較差および心拍出量から弁口面積を算出できるが,臨床においては心エコー図検査による計測が簡便である。僧帽弁弁口面積計測が重症度分類において最も重要であり,1.5~2.0cm2は軽症,1.0~1.5cm2は中等症,1.0cm2未満は重症に分類される。正常例では4.0~6.0cm2であるが,2.0cm2以下となると自覚症状が出現しはじめることがある。
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