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■NEWS 【欧州高血圧学会(ESH)】SPRINT試験適格は一般高齢高血圧例の3分の1?―イタリア観察研究

登録日: 2023-07-18

最終更新日: 2023-07-18

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ランダム化比較試験(RCT"SPRINT"は2015年、収縮期血圧(SBP)「120mmHg未満」を目標とする厳格降圧群が「140mmHg未満」を目標とする標準降圧群に比べ心血管系疾患を有意に抑制したと結論し、話題を呼んだ。翌年には、75歳以上高齢者に限定しても同様に有用だとする事前設定追加解析も報告され、「高齢者への降圧治療は原則として緩徐に」という当時の常識に一石を投ずる形となった。

しかしSPRINT試験に参加していた75歳以上患者がどの程度、実臨床における同世代高血圧患者を代表しているのか、この点には常に疑念が投げかけられていた。

6月23日からミラノ(イタリア)で開催された欧州高血圧学会(ESH)第32回学術集会では、SPRINT試験に参加できるのは通常75歳以上高血圧例の3分の1程度であり、それら3分の1は残り3分の2に比べ相当に健常であるとする観察データが示された。報告者はイタリア・フローレンス大学のMarco Capacci氏である。

同氏らが解析対象としたのは、現在イタリアで進行中の、75歳以上高血圧例観察研究"HYPER-FRAIL"NCT05776394)参加者である。75歳以上の高血圧患者は「余命6カ月以内」でなければ全例登録可能であり、現実の高血圧患者をよく反映していると考えられる。

これらHYPER-FRAIL参加例の登録時データにSPRINT参加基準を当てはめ、どれほどが参加可能(適格)となるかを検討した。

SPRINT試験の対象は心血管系リスクの上昇した、「SBP130mmHg」例だが、除外基準として「糖尿病合併」や「脳卒中既往」「起立後SBP<110mmHgへ低下」などが定められている。

その結果、HYPER-FRAIL研究参加123例中、SPRINT試験に適格だったのは32%(39例)のみだった。

これら適格39例とSPRINT試験に実際参加した75歳以上の2510例は、平均年齢(80歳)とフレイル例の割合(約30%)とも差はなかった。

一方、SPRINT試験参加「不適格」だったHYPER-FRAIL研究参加例(n=84)は、「適格」群に比べ平均年齢では有意差を認めなかったものの(81.6 vs. 80.6歳)、併存疾患指標であるCharlson Comorbidity Indexは有意に高く(5 vs. 4、中央値)、「生活基本動作に障害」の割合(25% vs. 5%)、「フレイル例」の割合(57% vs. 31%)、「歩行速度低下」例の割合(43% vs. 22%)も有意高値だった。

また血圧値は診察室、家庭、24時間自由行動下いずれの測定値も両群間に差はなかったものの、起立性低血圧の割合は「非適格」群で有意に高かった(50 vs. 30%)。

これら「非適格」高齢者に対する至適降圧目標も検討されるべきだとCapacci氏は結論している。

本報告に利益相反の開示はなかった。

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