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【文献 pick up】2型DM例のeGFR急速低下でHF発症リスク著増?―RCT"ACCORD"後付解析/Cardiovasc Diabetol誌

宇津貴史 (医学レポーター)

登録日: 2023-07-12

最終更新日: 2023-07-12

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2型糖尿病(DM)例における腎機能の推移は末期腎不全だけでなく、心不全(HF)発症の予知にも役立つ可能性がありそうだ。大規模ランダム化試験"ACCORD"の後付解析から明らかになった。Cardiovascular Diabetology誌6月26日掲載のCarlos Roberto Bueno Junior氏(米国・ジョスリン糖尿病センター)らによる論文を紹介する。

ACCORD試験の対象は、北米で登録された4079歳の心血管系(CV)高リスク2型DM 1251例である。「強化血糖コントロール群 vs. 標準血糖コントロール群」「強化降圧療法群 vs. 標準降圧療法群」「フィブラート服用群 vs. プラセボ服用群」にそれぞれランダム化され、「CV死亡・心筋梗塞・脳卒中」抑制作用が検討された。

さて今回の解析対象は、上記1251例中、観察期間が4年以上、かつ尿中アルブミンと腎機能データがあり、HF発症の有無も明らかだった7539例である。

平均年齢は63歳、糖尿病罹患期間は11年、HbA1cは8%強だった。およそ35%CV疾患既往があったが、HF既往例は約5%のみだった。レニン・アンジオテンシン系阻害薬は約7割、β遮断薬もおよそ3割が服用していた。

これら7539例を対象に「腎機能急速低下」がHF発症に及ぼす影響を検討した。

「腎機能急速低下」を推算糸球体濾過率(eGFR)の年間「5mL/分/1.73m2以上低下」と定義すると、20.9%がこれに相当した。この群における年間eGFR低下中央値は7.5mL/分/1.73m2である(非急速低下群では0.8mL/分/1.73m2

4年間の観察後、3.4%255例)がHFを発症した。

まず補正なしで比較すると、腎機能の「急速低下」群における「非低下」群に対するHF発症オッズ比(OR)は3.23[95%信頼区間(CI):2.514.16]の有意高値となった。

さらに「ACCORD試験割り付け治療」や「年齢」「性別」「DM罹患期間」「心保護薬服用状況」「追跡中HbA1c推移」など、HF発症に影響を与える可能性の諸因子を補正後も、やはり「腎機能急速低下」に伴うHF発症OR3.74[2.635.31]と有意高値が維持された。

上記補正には、試験開始時の「eGFR」と「尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR)」も含まれている。そのためBueno Junior氏らは腎機能の「高低」よりも「低下速度」のほうが、HF発症には関与しているのではないかと考察している。

このように腎機能急速低下とHF発症リスクが相関する理由として同氏らは、血行動態増悪を介した心腎連関以外にも、両者の増悪に共通する要因、すなわち炎症線維化の亢進が潜在している可能性などを挙げていた。

ACCORD試験は米国心肺血液研究所から資金提供を受けて実施された。今回の解析に関し、開示すべき利益相反はないという。

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