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特集:夏季に流行するウイルス感染症

No.5176 (2023年07月08日発行) P.18

谷本隆彦 (鹿児島生協病院感染症内科)

小松真成 (鹿児島生協病院総合内科)

登録日: 2023-07-07

最終更新日: 2023-07-06

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谷本隆彦
2017年鹿児島大学医学部卒業。今村総合病院救急総合内科などを経て,22年4月より感染症内科フェローとして現職。地域の感染症診療や院内AST活動に取り組んでいる。

1 Bornholm病
・胸部・腹部の深吸気や咳で悪化する痛みが特徴
・身体所見で筋把握痛や横隔膜の圧痛がみられる
・精巣痛もみられる
・血清CK値の上昇は稀
・症状軽快後の再燃に注意する

2 ヒトパレコウイルス3型感染症
・四肢近位部の疼痛,脱力が特徴
・精巣痛もみられる
・Bornholm病と比較して,血清CK値上昇の頻度が高い

3 手足口病・ヘルパンギーナ
・コクサッキーウイルスA6は成人にも感染。症状が重く非典型的経過をたどる
・エンテロウイルスA71は脳炎・髄膜炎の合併に注意

4 無菌性髄膜炎
・エンテロウイルス属が無菌性髄膜炎の原因として最多
・ムンプスウイルスによる髄膜炎の最大50%は唾液腺炎を伴わないので注意

5 アデノウイルス感染症
・アデノウイルスによる結膜炎は耳前リンパ節腫脹に注目する
・咽頭結膜熱と比較して流行性角結膜炎は好発年齢が乳幼児から中高年まで幅広い
・感染性胃腸炎は下痢持続期間が長く,アルコール耐性のため手洗いが大事

6 重症熱性血小板減少症(SFTS)
・発熱に加えて意識障害や消化器症状の頻度が高い
・直接マダニに咬まれるだけでなく,イヌやネコからの感染経路にも注意
・発生地域が関東に広がりつつあり,今後の流行に注意

7 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)との鑑別
・ウイルスごとに起こしやすい典型的な臨床像を把握する
・非典型例や無症候性感染例もあり流行状況に応じて検査を行って拾い上げる

8 今後,夏季に流行が予想されるウイルス感染症
・人の移動が活発化し輸入感染の増加に注意
・気候変動により夏のインフルエンザや蚊媒介感染症の流行も起こりうる

読者に伝えたいこと…
多くは小児で流行がみられるが,子どもから成人への感染で特徴的な症状を示すものもあり,子どもの病歴や接触歴を確認することが診断のヒントになる。多くはself-limitedな経過をたどるが,中枢神経系感染症などの合併症には注意が必要である。COVID-19は今後も夏季に流行するウイルスのひとつとなる可能性が高く,各ウイルスの臨床像の把握が重要である。さらに,輸入感染症,ダニ・蚊媒介感染症の流行も予想され,最新の流行状況の把握が必要である。

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