株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

【書評】『患者さんからの質問に自信を持って答える 不妊治療Q&A』

No.5171 (2023年06月03日発行) P.66

森本義晴 (IVF JAPAN CEO,世界体外受精学会President)

登録日: 2023-05-31

最終更新日: 2023-05-30

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

英国のステプトー博士とエドワーズ教授によって1978年に体外受精胚移植法が開発,臨床応用されて以来,不妊治療は大きく変革し,治療効率も以前と比較にならないほど改善している。

一方,治療内容は多岐にわたり,複雑化・専門化しており,素人の患者が医師の説明内容を理解し最適な治療法を選択することは容易ではない。通常,診療現場では医師は多忙を極めているため,患者から質問して治療内容を十分に理解することは困難である。また,専門用語が氾濫していることも患者を悩ませ,不安にさせる原因となっている。しかし,患者が医師の提示する治療法の内容を正確に理解してこそ,双方が納得のできる治療が可能となる。

このたび,片桐由起子教授が編者となって上梓された本書は,不妊治療の内容がきわめて平易にQ&A形式で記されており,不妊治療に詳しくない患者や専門外の医師にとって理解しやすい内容となっている。

また,一般不妊治療から高度生殖医療まで広い範囲をカバーしており,それぞれのテーマは長年にわたる片桐教授の生殖医療分野における豊富な経験と実績をもとに書かれており,学問的にも臨床的にも有用性が高い。特に,片桐教授の専門領域である不育症や遺伝子検査に関しては,患者にとって理解の困難な部分であるが,それぞれの内容が丁寧にわかりやすく記述されている。

さらには,充実した純医学的内容に加えて,書籍全体に貫かれている,患者に寄り添った女性医師としてのきめ細やかな視点からの社会学的記述は他の書籍にみられない特徴である。また,冒頭に掲載された写真は解像度も高く良質である。

また,本書を補う電子版にアクセスが可能なことも読者にとっては嬉しいことである。総合的にみて本書は,多くの読者の不妊治療の補助にきわめて有用性が高いと思われる。

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

関連求人情報

もっと見る

関連物件情報

もっと見る

page top