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家族性高コレステロール血症(小児)[私の治療]

No.5170 (2023年05月27日発行) P.50

鹿島田健一 (東京医科歯科大学医歯学総合研究科医歯学専攻発生発達病態学准教授)

登録日: 2023-05-24

最終更新日: 2023-05-23

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  • 家族性高コレステロール血症(familial hypercholesterolemia:FH)は,low-density lipoprotein(LDL)受容体およびその関連遺伝子の変異によって生じる。ヘテロ接合体(FHヘテロ)によるものは,200~500人に1人と高頻度であり,常染色体優性遺伝形式をとる遺伝性疾患である。無治療の場合,小児期より粥状動脈硬化が進行するため,早期発見,早期介入を必要とする。一方,ホモ接合体(FHホモ)は,100万人に1人と希少であり,常染色体劣性遺伝形式をとる。より重症で,乳児期より動脈硬化が開始することもあるため,治療の考え方はFHヘテロとは大きく異なる。

    ▶診断のポイント

    【FHヘテロ】

    通常,小児期は無症状のことが多い。偶発的に発見される高LDL-C血症や家族歴(両親,祖父母および兄弟姉妹などの高LDL-C血症や早発性冠動脈疾患などの既往)が診断の契機となる場合が多い。

    診断は,続発性脂質異常症(ネフローゼ,甲状腺機能低下症,肥満,糖尿病など)が否定され,①未治療時のLDL-C≧140mg/dL,②2親等以内のFHの家族歴(早発性冠動脈疾患などの既往等を含む),の2項目を満たす場合である。

    小児期にはLDL-C値が変動するため,疑った場合,複数回のLDL-C値を測定する。

    FHと診断された場合は必ず家族調査を行い,FH患児・患者の診断につなげる(カスケード・スクリーニングの概念)。

    小児期に黄色腫を認める場合,LDL-Cは著明高値の可能性が高い。この場合,FHホモや他の脂質代謝異常疾患(例:シトステロール血症,脳腱黄色腫)を疑う。

    【FHホモ】

    小児期より皮膚黄色腫,腱黄色腫を認め,LDL-C値はFHヘテロと比べ著明高値をとる。通常,両親がいずれもFHヘテロである。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    原則,日本小児科学会・日本動脈硬化学会合同小児家族性高コレステロール血症診療ガイド作成ワーキンググループによる「小児家族性高コレステロール血症診療ガイド2017」を参考にする。

    【FHヘテロ】

    早期から生活習慣の指導を行い,LDL-C値低下を図る。同時に,頸動脈超音波検査での肥厚やプラークの存在,単純X線によるアキレス腱肥厚の有無を定期的にモニタリングする。

    LDL-C値の管理目標は140mg/dL以下であり,180mg/dLを超える場合,次の治療ステップを考慮する。

    生活習慣の改善による効果が十分でない場合には,10歳を目安に薬物療法開始を考慮する。

    【FHホモ】

    薬物療法による反応性を見きわめ,不十分な場合には速やかにLDLアフェレシスを開始する。

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