2020年7月、日本救急医学会の呼びかけにより、日本臨床救急医学会、日本呼吸器学会、日本感染症学会の4学会で構成するワーキンググループが発足し、「新型コロナウイルス感染症流行下における熱中症対応の手引き」が作成された。このたび第2版1)が発表されたので、その概要を共有しつつ新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染症法上の位置付け変更後の熱中症対策について考えてみたい。
今回の第2版では、CQ(クリニカルクエスチョン)が初版の6つから7つへと増え、予防(Q-1〜Q-3)についてより細かい問いとなった。
厚生労働省はマスク着用が熱中症のリスクになるという立場を崩していないが、現時点においてそれはリスクにはならないだろうと考えられる。熱中症予防と感染予防を両立することが大事である。感染症法上の類型が変わってもウイルスの性質に何ら変化はない。診断については、CQは3つで変わらず(Q-4〜Q-6)、臨床症状から熱中症とCOVID-19との区別はつかないこと、血液検査での鑑別はできないこと、胸部CTも鑑別に不向きである旨が改めて共有された。
大きな変更があったのは治療(Q-7)についてである。
初版は蒸散冷却法に否定的な立場であったが、第2版では通常の感染対策で速やかに冷却することを是としている。体表面から発生するエアロゾルで感染することはないだろうが、咳や会話による感染リスクは有しているため、飛沫感染予防に努めるのが重要である。COVID-19の流行状況次第では、マスクとアイガードの着用が今後も望ましいだろう。
【文献】
1)日本救急医学会, 他:新型コロナウイルス感染症流行下における熱中症対応の手引き(第2版).
https://www.jaam.jp/info/2022/files/20220715.pdf
薬師寺泰匡(薬師寺慈恵病院院長)[マスク着用のリスク][蒸散冷却法]