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横紋筋肉腫[私の治療]

No.5168 (2023年05月13日発行) P.55

荒川 歩 (国立がん研究センター中央病院小児腫瘍科医長)

登録日: 2023-05-10

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  • 横紋筋肉腫は骨格筋の形質を有する悪性腫瘍であり,小児~AYA(adolescent and young adult)世代に好発する。全身のあらゆる部位から発生するが,泌尿生殖器,傍髄膜や眼窩を含む頭頸部,四肢が好発部位である。

    ▶診断のポイント

    【症状】

    無症状のこともあるが,横紋筋肉腫が発症する部位によって症状は多種多彩である。発症部位における腫瘤の触知,腫脹,疼痛によって発見されることが多い。

    【検査所見】

    生検による病理診断が確定診断に必須である。胎児型と胞巣型の分類,FOXO1融合遺伝子の検出が,治療方針に影響するため重要である。病変の広がりの評価にはCT検査,頭頸部などの発症部位によってはMRI検査が用いられる。骨髄転移の有無の評価のための骨髄生検,中枢神経転移の評価のための髄液細胞診も有用である。また,FDG-PETは骨病変を含む,腫瘍の広がりの評価に近年用いられる。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    横紋筋肉腫の治療を適切に実施するためには,的確な診断と病変の広がりの評価が重要である。小児やAYA世代に好発する肉腫であるユーイング肉腫や滑膜肉腫などとの鑑別は,画像検査のみでは困難であるため,初回手術,初回手術が困難あるいは整容性の観点から不適当である場合は,生検による十分な検体採取を行った上で,熟練した病理医による病理診断を得る。胞巣型横紋筋肉腫の約80%にFOXO1融合遺伝子の発現が認められる。FOXO1融合遺伝子陽性の横紋筋肉腫は,陰性の横紋筋肉腫と比べて予後不良であり,治療方針や化学療法の強度,放射線照射の照射量が異なるため,FOXO1融合遺伝子の検出は必須である。

    病理組織型(胎児型と胞巣型,近年ではFOXO1の有無がリスク分類に用いられる),術前ステージ分類,術後グループ分類により,リスク分類が決定されリスクに応じた層別化治療が実施される。術前ステージ分類としては,原発部位に予後良好部位と予後不良部位が規定されている。予後良好部位は眼窩,頭頸部(傍髄膜を除く),泌尿生殖器(膀胱や前立腺を除く),肝胆道で,予後不良部位は傍髄膜,膀胱,前立腺,四肢やその他の部位である。術後グループ分類としては,化学療法前の初回手術時に組織学的に全摘除された限局性腫瘍,肉眼的には切除されたが組織学的残存のある腫瘍,生検のみあるいは肉眼的遺残あり,転移あり,の4つに大きく分類される。

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