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【識者の眼】「Diversityの効果」野村幸世

No.5169 (2023年05月20日発行) P.60

野村幸世 (東京大学大学院医学系研究科消化管外科学分野准教授)

登録日: 2023-05-09

最終更新日: 2023-05-09

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外科領域や消化器領域の男女共同参画推進のお手伝いをしているが、なかなか進まない。Diversityの重要性を理解し、協力してくれる方も増えてはいる。しかし、まだまだ理解していない人も多いのが現状である。Diversityには、人権の尊重や皆が幸福感を持って所属できること、職場の人間関係がスムーズになること、などのような時間横断的な効果があることはよく語られており、その重要性を理解している人は増えている。しかし、組織の将来性に関してまで理解している人は少ない。その理由として、Diversityの効果が組織に反映されてくるのには若干時間がかかるということも挙げられると思う。

私が大学医学部を卒業する頃には、まだ、「女はいらない」と豪語している医局が多々あったことは以前にも書いたことがある。その頃はまだDiversityなどという言葉が汎用されない時代であった。しかし現在、私が所属している教室は新入局者の性別に関しては既に問題にしない時代に入っている。私が入局する40年くらい前に最初の女性医局員が誕生し、そのときに議論は尽くされたようだ。そのため、私の入局も何ら問題なく受け入れられた。

ただ、その当時のわが医局は決して規模の大きな組織ではなかった。私も、はたしてこの小さな医局に入るということでいいのか、少し迷ってはいた。そのとき、私と実習の班も一緒だった1人の男子同級生が、この医局に入局すると言う。彼は、私などに比較したらもっとエリートの、どこの医局も欲しがるであろう人材であった。もちろん、私は彼にこの小さな医局を選ぶ理由を聞いてみた。答えは、純血は弱いものであり、色々混ざっているほうが組織は強いから、とあっさり答えられたのを覚えている。彼のこの意見により、私も迷いを捨てて今の医局に入局した。

もう30年以上前の話をしてしまったが、彼は当時既にDiversityの重要性を理解し、人生の選択にも利用していたことになる。あれからわが医局は徐々にではあるが、大きくなってきたと思う。女性の医局員も他の外科医局に比較すると、人数はかなり多いと思う。私の入局直後は毎年女性の入局があったのを覚えている。

優秀な人間は普遍的原則をも利用し、遠い将来を見据えて物事を判断することができる。目の前のことにだけとらわれることなく、遠い将来を見据えてDiversityの重要性を理解してほしいものである。

野村幸世(東京大学大学院医学系研究科消化管外科学分野准教授)[医局の興隆]

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