精索静脈瘤は,内精静脈の逆流に伴ううっ血により陰囊の蔓状静脈叢が拡張することにより生じる。思春期以降に好発し,一般成人男性の8~23%に認められる。男性不妊症患者では21~39%に認められ,より高頻度であることから,精子形成障害をきたす原因疾患のひとつとされている1)。逆流の原因としては,左腎静脈圧の亢進や静脈弁の機能異常などが考えられ,大部分が左側に生じる。精巣の温度上昇,腎・副腎代謝産物の精巣への逆流,酸化ストレスの亢進などが精子形成障害を引き起こすと考えられるが,詳細は解明されていない。
多くは無症状であるため,男性不妊症の精査中に視触診で発見されることが多い。小児期や思春期に陰囊の腫瘤や鈍痛などで診断されることもある。鈍痛は運動時など立位で腹圧が加わったときに出やすい。安静時に痛みを訴える場合は,非特異的な症状の可能性を考慮する。
立位で陰囊を視触診することにより診断し,以下のように3段階に分類する。
グレード1:Valsalva手技(腹圧負荷)にて触知可能
グレード2:腹圧負荷なしに容易に触知可能
グレード3:視認可能
グレードが高い場合は,患側精巣の発育遅延により精巣の左右差を認める。
陰囊の超音波検査やカラードプラ検査法は診断に有用である。超音波検査により鼠径部から陰囊にかけて拡張した静脈を確認できる。静脈径が3mm以上を有意な拡張としている。カラードプラ検査法では臥位・立位,腹圧負荷の有無で逆流の程度を評価する。グレード3では,腹圧を加えず立位のみで著明な逆流を認める。画像所見は,治療前後の状態を患者に説明する際にも有用である。
成人の場合,未婚であっても精液検査を行い,精子形成障害の有無を確認している。静脈塞栓を伴う腎細胞癌では,静脈内圧が上昇し精索静脈瘤を生じることがあることにも留意する。
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