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【識者の眼】「子どもの行事、参加できていますか?」稲葉可奈子

No.5165 (2023年04月22日発行) P.58

稲葉可奈子 (公立学校共済組合関東中央病院産婦人科医長)

登録日: 2023-04-05

最終更新日: 2023-04-05

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うちには子どもが4人おり、2番目が今年保育園を卒園しました。卒園→入学や卒業→進学のタイミングは、卒業(園)式や入学式などなにかと仕事を休まねばならないことが多くなります。幸い、わたしの職場は育児に非常に理解があり、子どもの行事のために休みをとることで肩身の狭い思いをしたことがなく、大変感謝しております。もちろんわたし自身も、予約を調整したり迷惑をかけないようにと尽力しています。

先日、全く異なる業種のママ友が、職場の上司から「卒園式って行かないといけないの?(また休むの?)」と言われた、という話を聞き、衝撃を受けました。

少子化対策や育児支援が議論されていますが、仕事と育児の両立に必要なのは、制度や福利厚生よりもなによりも、職場の理解です。いくら制度が整っても、それを利用しにくい環境では意味がありません。

世代の違いや、自分は子どもの行事には参加しなかった、という価値観の違いなど、事情は様々と思いますが、子どもの行事に参加することは親としてごく自然なこと、という意識改革がなされてほしいと思います。

ただ、意識改革だけで解決する問題ではなく、人手不足という物理的な問題もあるのかもしれません。これは育児だけでなく、医師の働き方改革なども同様で、理念だけで働き方改革を進めるのは無理があります。集約化など、実質的な変革と並行して進めないと、現場が疲弊するかもしくは業務の質が低下してしまうでしょう。

労働環境の改善は、人材の確保にもつながり得ます。ある外科の先生が、育児にもっと関われるようにと美容クリニックへ転職されたのですが、外科で育児と両立できれば外科を続けられたかもしれません(外科が一概に両立困難な診療科、という意味ではありません)。

時代や世代の違い、家庭によってもあり方はいろいろです。育児だけでなく、介護との両立という問題もあります。

診療科によっては手術時間が長いなどいかんともしがたい部分はもちろんありますが、たとえばカンファレンスの時間を定時内にするなど、小さな改革の積み重ねで、医療現場も多様な生き方に対応できる、サステイナブルな組織となれると思います。

子育てにも全力投球しながら大好きな産婦人科診療を続けることができているのは、今の日本では決して当たり前ではなく非常に恵まれたことなのだと改めて感謝をするとともに、これが当たり前な日本社会になってほしいと心より願います。

稲葉可奈子(公立学校共済組合関東中央病院産婦人科医長)[育児と仕事の両立][医師の働き方改革]

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