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地域包括ケアシステムで地域医療の再興を - 医師会員に総力挙げた取り組み求める [日医臨時代議員会] 

No.4693 (2014年04月05日発行) P.9

登録日: 2014-04-05

最終更新日: 2016-11-18

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【概要】3月30日の日医臨時代議員会で横倉会長は、「“かかりつけ医”を中心とする地域包括ケアシステムの整備・推進によって、疲弊した地域医療は必ずや再興する」と訴えた。


実質改定率でマイナス1.26%となった今回の診療報酬改定について、横倉義武会長は挨拶の中で、「決して十分な内容とは言えない」と改めて指摘。
特に、薬価引下げ分が診療報酬本体の改定財源に充てられなかったことについて、「極めて特例的な措置と考えている。今回のケースが前例とならぬよう、今後とも強く主張していく」との決意を示した。
地域医療体制の構築に向けては、今年2月、日医事務局内に「地域包括ケア推進室」を設置し、行政と地域医師会との連携・調整を実務的に円滑化し、地域ごとの方針・計画策定を支援する体制を整えたことを報告。「都道府県と円滑な関係を築きつつ、地域の特性に応じた医療のビジョンを描きながら、住民の健康を守っていただきたい」と呼びかけた。

●規制緩和の動き「阻止していく」
「選択療養(仮称)」制度創設といった保険外併用療養のさらなる拡大や、国家戦略特区における医学部新設の検討など、最近の政府内の規制緩和の動きに関しては、「厳しく反対の姿勢をとり、これを阻止していく」考えを強調。
横倉会長はその上で、「国民皆保険の堅持と“かかりつけ医”を中心とする地域包括ケアシステムの整備・推進によって、疲弊した地域医療は必ずや再興するものと確信している」と述べるとともに、今回の社会保障・税一体改革による医療提供体制の改革をその「第一歩」と位置づけて、医師会員が総力を挙げて取り組んでいく必要性を訴えた。

●消費税8月までに最終解決策
今回、ブロック代表、個人を通して最も多くの質問があったのが、消費税問題。金井忠男(関東甲信越ブロック)、小尾重厚(長崎)、田畑陽一郎(千葉)、田村瑞穂(青森)の4氏が執行部の見解を求めた。
答弁に立った今村聡副会長は、今回の改定で、消費税率引上げの対応として基本診療料への補塡がなされたことは「あくまで過渡的な措置。診療報酬上での完全解決は無理がある」と強調。現在会内で、社会保険診療報酬の課税化やゼロ税率の適用、非課税還付方式などさまざまな解決方法を検討しているとし、与党税調の税制改正要望が始まる8月半ばまでに最終解決策をまとめる方針を明らかにした。
横倉会長は、「様々な立場、考えがあると思うが、この方向でいくと決めた場合は是非会員の先生方に協力をいただきながら、その実現に向けて強力に進めていく」と強調。「武見(太郎)元会長がこの状態を見たら決して許しておかないであろう」との田村氏の指摘を受けて、「武見先生の爪の垢を煎じてでも頑張っていく」とも述べ、協力を求めた。
一方、今村定臣常任理事は、広報活動の取り組みを説明。「厚生労働省が定める診療報酬や薬価等には医療機関が仕入れ時に負担する消費税が反映されている」などのメッセージを盛り込んだ厚労省作成のポスターと日医作成のポスターは、それぞれ『日医ニュース』5月5日号に織り込み会員に送付するとし、病院・診療所の待合室に両ポスターを併せて掲示し、患者に周知するよう求めた。
非課税還付が実現した場合の事務負担の問題に関しては、還付を受けるためには実額での記載が求められることから、課税売上げ年間5000万円以下の事業者が納税を概算で行う簡易課税制度と同様の負担軽減措置を強く要望していくとした。

●登録人頭割り定額制「全く考えていない」
臨時代議員会ではまた、今回の改定で、かかりつけ医機能の評価として新設された地域包括診療料、地域包括診療加算をめぐる議論が展開。
鈴木邦彦常任理事は、「今回は財源の制約もあり、包括評価のハードルは極めて高くなっている。今後とも国民会議報告書の方向性を踏まえつつ、現場の状況をしっかり検証しながら議論を進めていきたい」との姿勢を示した。
吉本正博(山口)、今眞人(北海道)両氏の「将来的に登録人頭割り定額制に結びつくのでは」との懸念には、「日医として全く考えていない。新専門医制度における総合診療専門医の議論も踏まえ、かかりつけ医機能の充実を図りつつ、この議論の主導権を握りながら対応していく」と述べた。
地域包括診療料/加算についてはさらに、上林雄史郎氏(近畿ブロック)が、対象疾患に含まれた認知症に関する日医の取り組みを質した。
松原謙二副会長は、地域医師会とかかりつけ医にとって、行政、地域包括支援センター、介護サービス事業者等との連携による認知症ケアパスの作成や、認知症医療センター等における専門職との連携が「必要不可欠」と指摘。サポート医を中心に、若年性認知症など幅広い認知症に対応できる人材の育成に取り組む姿勢を示した。

●「服薬管理は医師の仕事」
関連して近藤太郎氏(東京ブロック)は、院外処方を行う場合「24時間開局薬局が原則」とされたことについて、地域で対応可能な薬局を増やす必要性を指摘した。
横倉会長は「この点数によって服薬管理は医師の仕事であることが明確になった。地域の医師はその観点に則って、調剤薬局との連携を考えてほしい」と訴え、日医として日本薬剤師会、日本歯科医師会との連携を強め、解決を図る姿勢を示した。

●勤務医・女性医師を理事に登用
臨時代議委員会ではこのほか、2014年度事業計画(重点課題)について、中川俊男副会長が報告(別掲)。また、定款・諸規定検討委員会の「現在の理事定数を2名増員し、それぞれ勤務医、女性医師各1名の登用に充てるべき」との答申を受けて、現行の定款「理事27名以内」を「理事29名以内」に改正する議案が了承された。

【記者の眼】臨時代議員会では広報活動の強化を求める声も多かった。消費税率引上げに加え70~74歳の窓口負担の変更で国民患者の負担感は増している。医療機関が増税分以上の収入を得るかのような誤解や受診抑制につながらないよう、現場の医師による丁寧な説明も必要だ。(A)

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