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抗N-methyl-D-aspartate(NMDA)受容体脳炎と卵巣奇形腫 【女性患者の4割が合併し,合併疑い例では腫瘍摘出を優先】

No.4819 (2016年09月03日発行) P.54

坂口 勲 (熊本大学産科婦人科)

片渕秀隆 (熊本大学産科婦人科教授)

登録日: 2016-10-18

最終更新日: 2016-10-19

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抗N-methyl-D-aspartate(NMDA)受容体脳炎は,NMDA受容体のNR1 subunitの立体的エピトープを認識する自己抗体により生じる辺縁系脳炎である。患者の8割が女性であり,発症年齢の中央値が21歳と若年層に多い1)。臨床症状は頭痛,発熱,倦怠感などの特徴的な前駆症状に始まり,統合失調症様の精神症状,緊張病性の混迷,不随意運動を伴うようになり,回復までに長時間を要する1)

中でも,抗NMDA受容体脳炎の大きな特徴は,女性患者の4割に卵巣奇形腫の合併が認められることである。治療戦略として,ステロイドパルス療法,免疫グロブリン大量療法や血漿交換療法に加えて,画像診断で卵巣奇形腫が疑われる場合には積極的な腫瘍摘出が優先される。しかし,腫瘍摘出までに要する期間が平均28日間と長いことも指摘されており,特に神経内科や精神神経科と比較して産婦人科領域における本疾患の認知度の低さが問題視されている2)

今後の課題は,婦人科領域における抗NMDA受容体脳炎の認識を深め,本疾患症例が産婦人科医に委ねられた時点で,早急な治療方針の決定と,適切な手術療法が選択される体制を構築することである。

【文献】

1) Titulaer MJ, et al:Lancet Neurol. 2013;12(2): 157-65.

2) Acién P, et al:Orphanet J Rare Dis. 2014;9: 157.

【解説】

坂口 勲,片渕秀隆 熊本大学産科婦人科 教授

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