QT延長症候群(long QT syndrome:LQTS)は,心電図のQT時間の延長とtorsade de pointes(TdP)と呼ばれる多形性心室頻拍(VT)を主徴とし,時に心室細動(VF)に移行し心臓突然死の原因となる疾患である。QT延長は,修正QT時間(QTc=QT/√RR)が440ms以上と定義される。頻度は2000人に1人とされ,性差は若干女性が多い。
臨床診断は,心電図所見(QT時間,TdP,T波オルタナンス,ノッチ型T波,年齢不相応な徐脈),臨床症状(失神,先天性聾),家族歴を点数化し,合計3.5点以上の場合に診断可能である。先天性LQTS関連遺伝子に明らかな病的変異を認める場合,常にQTc≧500msの場合も診断可能である。イオンチャネルに関連する遺伝子上に75%の患者で変異を認め,このうち90%以上の患者はLQT1,LQT2,LQT3(それぞれ40%,40%,10%)である。
治療は,TdP発作時の急性期治療と慢性期治療(TdPの予防)にわけられる。遺伝子診断がつけば,LQT1,LQT2,LQT3では,遺伝子型特異的な生活指導や薬物治療が可能である。非薬物治療は,VF/心停止既往例,薬物治療で心イベントを抑制できない場合に選択される。
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