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【文献 pick up】DOACを飲まない患者の理由が明らかに―400例強横断研究

宇津貴史 (医学レポーター)

登録日: 2023-02-01

最終更新日: 2023-02-02

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心房細動例に対する抗凝固療法として直接作用型抗凝固薬(direct oral anticoagulantDOAC)は、ワルファリンよりも服薬アドヒアランスが良好とされる。しかし観察研究メタ解析が報告する服薬アドヒアランスは、処方開始1年後の時点ですでに8割を下回っていた[Salmasi S, et al. 2020。ではなぜ患者は、処方されたDOACを指示通りに服用しないのか―。そこに着目した研究がJACC Advances誌ウェブサイトに、127日付けで公開された。著者はUCLA(米国)のDerjung M. Tarn氏ら。概要を紹介したい。

解析対象となったのは、米国ロサンゼルス州の大学関係医療機関でDOAC(アピキサバン)を処方され、その後のメール/郵便アンケートで「服薬アドヒアランスは不良」(医師の指示なく「服用しない」、「時々服用を忘れる」、「頻繁に服用を忘れる」)と回答した心房細動/粗動の428名中、回答不備を除いた419例である。アンケート送付8365名の5.0%、回答者中の心房細動/粗動例の20.3%に相当する。

平均年齢は71.1歳、女性は41.5%、大卒以上が66.6%(うち62.3%は院卒)を占めた。

まず服薬アドヒアランスを「やや不良」、「不良」、「かなり不良」の3群に分けた。分類に「服薬日数」「服薬頻度」「服薬姿勢」の3項目合計100点で自己評価するアドヒアランス・スコア[Wilson IB, et al. 2016を用いると、66%がスコア「≧80」(やや不良)、20%が「6079」(不良)、14%が「<60」(かなり不良)だった。

これら3群の特性を比べると「かなり不良」群では、「脳梗塞よりも出血を恐れている」患者の割合が16%で、「不良」群(4%)、「やや不良」群(6%)よりも有意に多かった。

同様に「かなり不良」群では「DOACで脳梗塞が予防できる」と信じている患者の割合が有意に低かった(61% vs. 6979%)。

また医師に対する「アドヒアランス不良」”非“報告率も「かなり不良」群では56%で、「不良」群(44%)、「やや不良」群(39%)よリも高い傾向にあった。

次にこれら3群別のアドヒアランス不良の理由を調べた。するといずれも最大要因は単純な「飲み忘れ」だった。しかしその割合は群間で異なり、アドヒアランス「やや不良」群では84%を占めたのに対し「不良」群では70%、「かなり不良」群に至っては32%だった。「アドヒアランスが悪くなるほど、意図的な服薬回避の割合が高くなる」と原著者は考察している。

そこで「飲み忘れ」以外の"非アドヒアランス"理由を見ると、アドヒアランス「かなり不良」群では「重篤出血の恐れ」が最多(39%)で「常に症状があるわけではない」(37%)、「必要とは思わない」(18%)が続いた。前二者は非服用の原因として、「飲み忘れ」(32%)よりも多い。

一方、「不良」群では「飲み忘れ」(70%)を除くと「高価すぎる」が圧倒的に多く(14%)、「いつも飲まなくても大丈夫」(11%)が続いた。米国における同DOACの市場価格は、30日分でおよそ650米ドルだという。

原著者らは、「かなり不良」群の半数以上がアドヒアランス不良を医師に報告していなかった点を特に問題視し、薬剤師や医師以外の医療スタッフによる、アドヒアランス確認の有用性を示唆している(非アドヒアランスそのものに対しては医師が対応)。

わが国で同様の調査した場合、どのような結果になるだろう。DOACとワルファリン間で「脳梗塞・塞栓症」、「大出血」とも発生率には有意差がないという地域悉皆的な観察研究も報告されており[Yamashita Y, et al. 2017、興味深いところである。

なお原著者は、すでにDOAC服用を中止してしまった例はこのアンケートに回答しない可能性が高いため、本研究は"非アドヒアランス"の実態を過小評価している可能性も指摘している。

本研究は、Bristol-Myers Squibb社とPfizer社から資金提供を受けた。

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