株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

【文献 pick up】「イベント延引幅」(DoE)という新しい有効性・安全性の指標。DOACとワルファリンを比べると?:米国大規模コホート

宇津貴史 (医学レポーター)

登録日: 2022-12-08

最終更新日: 2022-12-08

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

非弁膜症性心房細動(AF)に対する直接経口抗凝固薬(DOAC)はワルファリンと比べたときの脳卒中と大出血リスクの有意な低リスクが、ランダム化比較試験(RCT)のメタ解析から明らかになっている[Ruff CT, et al. 2014]。しかしイベントハザード比(HR)を用いた比較は、その結果を医師と患者が同じように理解しているとは限らない。そのため新たな比較方法が提唱されており、その1つが「イベント延引幅」(Delay of EventsDoE)である[Lytsy P, et al. 2012 。イベントの「発生率」ではなく「発生までの期間」を比較する。

そこでクイーンズランド大学(オーストラリア)のSteven Deitelzweig氏らは大規模コホートデータを用いて、非弁膜症性AFに対するDOACとワルファリンの有効性・安全性を「DoE」評価で比較した[Deitelzweig S, et al. 2022]。その結果、HR評価とはかなり異なった印象を与え得る数字が示された。

解析対象となったのは、米国の官民データベースから抽出されたDOAC処方歴のあるAF患者466991例中、傾向スコアでワルファリン群と背景因子を揃えたアピキサバン群(10977例)、ダビガトラン群(36990例)、リバーロキサバン群(125068例)並びに、各群と同数のワルファリン群である。

平均年齢はおよそ75歳、CHA2DS2-VAScスコア平均は4.0弱、HAS-BLEDスコアは平均でおよそ3.0だった。

これらを対象に、DOAC処方開始後1年間の各種イベントHRDoEを算出した。 

その結果、「脳卒中・塞栓症」のHRをワルファリン群に比べると、アピキサバン群では0.6495%信頼区間[CI]:0.580.70)の有意低値だった。通常この結果は「36%のリスク低下」と表される。次に同じ結果を「DoE」で評価すると101日(95%CI78124日)だった。言葉に直せば「101日間遅延させた」となろう。

同様にダビガトラン群でもHR0.820.710.95)、DoEなら45日(387日)、リバーロキサバン群はHR0.790.730.85)、DoE63日(4284日)という評価になった。

「大出血による入院」も同様に検討すると、アピキサバン群は116日の有意遅延(103130日)、ダビガトラン群では92日(68116日)。一方リバーキサバン群ではワルファリン群に比べ18日(631日)の「前倒し」になっていた。

通常用いられるリスク比較に「DoE」を加えれば治療効果についてのより全体的評価が、医師だけでなく患者にも可能になると、Deitelzweig氏は主張している。

本研究はPfizer IncBristol-Myers Squibbからの資金提供を受けている。また原著者10名中5名は上記2社の社員である。

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

もっと見る

関連求人情報

公立小浜温泉病院

勤務形態: 常勤
募集科目: 消化器内科 2名、呼吸器内科・循環器内科・腎臓内科(泌尿器科)・消化器外科 各1名
勤務地: 長崎県雲仙市

公立小浜温泉病院は、国より移譲を受けて、雲仙市と南島原市で組織する雲仙・南島原保健組合(一部事務組合)が開設する公設民営病院です。
現在、指定管理者制度により医療法人社団 苑田会様へ病院の管理運営を行っていただいております。
2020年3月に新築移転し、2021年4月に病院名を公立新小浜病院から「公立小浜温泉病院」に変更しました。
6階建で波穏やかな橘湾の眺望を望むデイルームを配置し、夕日が橘湾に沈む様子はすばらしいロケーションとなっております。

当病院は島原半島の二次救急医療中核病院として地域医療を支える充実した病院を目指し、BCR等手術室の整備を行いました。医療から介護までの医療設備等環境は整いました。
2022年4月1日より脳神経外科及び一般外科医の先生に常勤医師として勤務していただくことになりました。消化器内科医、呼吸器内科医、循環器内科医及び外科部門で消化器外科医、整形外科医の先生に常勤医師として勤務していただき地域に信頼される病院を目指し歩んでいただける先生をお待ちしております。
又、地域から強い要望がありました透析業務を2020年4月から開始いたしました。透析数25床の能力を有しています。15床から開始いたしましたが、近隣から増床の要望がありお応えしたいと考えますが、そのためには腎臓内科(泌尿器科)医の先生の勤務が必要不可欠です。お待ちいたしております。

●人口(島原半島二次医療圏の雲仙市、南島原市、島原市):126,764人(令和2年国勢調査)
今後はさらに、少子高齢化に対応した訪問看護、訪問介護、訪問診療体制が求められています。又、地域の特色を生かした温泉療法(古くから湯治場として有名で、泉質は塩泉で温泉熱量は日本一)を取り入れてリハビリ療法を充実させた病院を構築していきたいと考えています。

もっと見る

関連物件情報

もっと見る

page top