株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

【文献 pick up】HFmr/pEFに有効な薬剤はSGLT2阻害薬だけ?:RCT 15報メタ解析

宇津貴史 (医学レポーター)

登録日: 2022-11-25

最終更新日: 2022-11-25

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

左室駆出率(EF)「40%未満」心不全に対する薬剤治療とは対照的に、EF40%以上」心不全(HFmrpEF)に対する薬剤治療は定まっていない。わが国のガイドライン(2021年JCS/JHFSガイドライン フォーカスアップデート版 急性・慢性心不全診療)においても、HFmrEFに対しては「個々の病態に応じて判断」、HFpEFに対しても「うっ血に対し利尿薬/併存症に対する治療」と記されているのみだが、これはもっぱら推奨のもととなるエビデンスが存在しなかったことに起因する。

しかしその後、HFmrpEFに対するSGLT2阻害薬の有用性が、2つのランダム化比較試験(RCT)で示された(EMPEROR-PreservedDELIVER)。そのような成績を受けYaowang Lin氏(深圳市人民医院、中国)らは、SGLT2阻害薬以外も含めた薬剤の有効性を検討するメタ解析を実施した。Cardiovasc Diabetol誌論文から紹介したい。現時点では「心不全入院」を減少させる薬剤はあるものの、「総死亡」や「心臓死」はまだ、抑制できないようだ。

同氏らが解析対象としたのは、「EF40%」心不全を対象として経口薬を比較したRCT 15報(31608例)である。評価項目に「総死亡」、「心臓死」、「心不全入院」、「心不全増悪」が含まれていない試験は除外されている。

その結果、「総死亡」リスクをプラセボに比べ有意に減少させた薬剤は、存在しなかった(SGLT2阻害薬、β遮断薬、ACE阻害薬、ARB、ミネラルコルチコチイド受容体[MR]拮抗薬)。ただしβ遮断薬群の対プラセボ群「総死亡」オッズ比(OR)は0.6095%信頼区間[CI]:0.361.01)で、有意差はないものの他剤に比べ低値だった(次いでSGLT2阻害薬[OR0.9495%CI0.851.03])。

「心臓死」も同様で、SGLT2阻害薬、β遮断薬、ACE阻害薬、ARBMR拮抗薬のいずれも、プラセボに比べ有意なリスク低下は認められなかった。しかしACE阻害薬はOR0.5995CI0.281.25)と、他剤に比べ有意ではないものの低値となっていた。

「心不全入院」はプラセボに比べ、ACE阻害薬(0.640.430.96)とSGLT2阻害薬(0.740.660.83)で有意なリスク低下を認めた(カッコ内はOR95%CI)。一方、ARBではプラセボに比べ「心不全入院」の有意な抑制を認めなかった。そのARBに比べアンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNi)は、「心不全入院」OR0.8095%CI0.710.91)の有意低値となっていた。

原著者らはこの結果から、HFmrpEF例がACE阻害薬を忍容できない場合、切り替えるならばARBではなくARNiにすべきだと主張している。

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

もっと見る

関連求人情報

公立小浜温泉病院

勤務形態: 常勤
募集科目: 消化器内科 2名、呼吸器内科・循環器内科・腎臓内科(泌尿器科)・消化器外科 各1名
勤務地: 長崎県雲仙市

公立小浜温泉病院は、国より移譲を受けて、雲仙市と南島原市で組織する雲仙・南島原保健組合(一部事務組合)が開設する公設民営病院です。
現在、指定管理者制度により医療法人社団 苑田会様へ病院の管理運営を行っていただいております。
2020年3月に新築移転し、2021年4月に病院名を公立新小浜病院から「公立小浜温泉病院」に変更しました。
6階建で波穏やかな橘湾の眺望を望むデイルームを配置し、夕日が橘湾に沈む様子はすばらしいロケーションとなっております。

当病院は島原半島の二次救急医療中核病院として地域医療を支える充実した病院を目指し、BCR等手術室の整備を行いました。医療から介護までの医療設備等環境は整いました。
2022年4月1日より脳神経外科及び一般外科医の先生に常勤医師として勤務していただくことになりました。消化器内科医、呼吸器内科医、循環器内科医及び外科部門で消化器外科医、整形外科医の先生に常勤医師として勤務していただき地域に信頼される病院を目指し歩んでいただける先生をお待ちしております。
又、地域から強い要望がありました透析業務を2020年4月から開始いたしました。透析数25床の能力を有しています。15床から開始いたしましたが、近隣から増床の要望がありお応えしたいと考えますが、そのためには腎臓内科(泌尿器科)医の先生の勤務が必要不可欠です。お待ちいたしております。

●人口(島原半島二次医療圏の雲仙市、南島原市、島原市):126,764人(令和2年国勢調査)
今後はさらに、少子高齢化に対応した訪問看護、訪問介護、訪問診療体制が求められています。又、地域の特色を生かした温泉療法(古くから湯治場として有名で、泉質は塩泉で温泉熱量は日本一)を取り入れてリハビリ療法を充実させた病院を構築していきたいと考えています。

もっと見る

関連物件情報

もっと見る

page top