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プライマリ・ケア現場でのSDHアセスメント─プライマリ・ケアの現場でSDHに立ち向かう[プライマリ・ケアの理論と実践(159)]

No.5137 (2022年10月08日発行) P.12

水本潤希 (愛媛生協病院家庭医療科)

登録日: 2022-10-06

最終更新日: 2022-10-05

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SUMMARY
医療現場で患者の抱える健康の社会的決定要因(social determinants of health:SDH)に適切に対応するスキルと資源を持つことが,患者にとっても医療者にとっても重要である。現場で対応するにあたっての障壁を知り,そして乗り越えることが求められる。

KEYWORD
CPMAフレームワーク
SDHに向き合うための具体的な実践の枠組み。良好な患者医療者ならびに多職種コミュニケーションをもとに,院内外で協働しケアを実践し,自身とチームのマネジメントを行いつつ,臨床家として可能なアドボカシー活動を行うことを求めている。

水本潤希(愛媛生協病院家庭医療科)

PROFILE
東京大学大学院医学教育国際研究センター医学教育学部門博士課程在籍中。家庭医として,愛媛生協病院,伊予診療所で,外来,訪問診療,救急,教育,路上生活者支援を行っている。

POLICY・座右の銘
You must crawl before you walk.

1 現場でSDHに向き合うには

医療者は,複雑な健康上・社会上の課題を抱えている患者に向き合う際に,自分の無力さを感じ,欲求不満であるとすら思ってしまうことがある。そして,多くの医療者は医学的な管理と生活習慣の是正に焦点を当てることを好み,患者の抱えるSDHについて尋ねることを避ける1)。満たされない社会的ニーズを抱えた患者を診療することは,医療者の燃え尽きのリスクを高める。

医療者が患者の社会背景に介入しようとしない理由のひとつとして,自己を守るために逃避行動をとってしまう,つまり,見て見ぬふりをして逃げてしまうことが挙げられる,と筆者は考えている。ほかにも,否認(患者の抱える社会的問題に介入するのは医療者の仕事ではない),投影(患者は医療者に社会的な問題など言いたくないはずだ),合理化(医療者の言うことを聞かない患者が悪い)といった防衛機制は,普段の診療場面で多くみられるのではないだろうか。

プライマリ・ケア従事者がこのような未熟な防衛機制に頼ってしまうと,ケアを必要としている患者にほどケアが届かない,という現象(inverse care lawという)が起こってしまう。大事なのは,医療者が燃え尽きず,自己効力感を高めながら,患者を取り巻く社会的状況にアプローチし,医療誘発性の健康格差を是正することである。そのためには,患者の抱えるSDHに対応するスキルと資源を持つことが必要である。







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