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特集:OTC薬乱用の現状と対応─最も身近な医薬品の意外な落とし穴

No.5133 (2022年09月10日発行) P.18

嶋根卓也 (国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所薬物依存研究部心理社会研究室長)

登録日: 2022-09-09

最終更新日: 2022-09-06

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2008年順天堂大学大学院医学研究科修了。国立精神・神経医療研究センター,薬物依存研究部流動研究員,心理社会研究室研究員を経て,2012年より現職。専門は公衆衛生学・疫学。

1 OTC薬乱用とは
OTC薬とは,処方箋がなくてもドラッグストア等で購入できる市販薬,大衆薬である。OTC薬は我々の生活に身近な医薬品で安全性が高いと思われがちであるが,今,若年者を中心にOTC薬の乱用が広がりつつある。

2 増え続けるOTC薬乱用とその背景
薬物依存臨床では,2012年から2020年にかけて,OTC薬を主たる薬物とする症例が約6倍に増加している。OTC薬の入手のしやすさや,「使っても捕まらない」という合法性が乱用拡大の要因のひとつになっている。

3 乱用されているOTC薬の含有成分と健康影響
乱用の対象となっているOTC薬に含有される成分として,ジヒドロコデイン,デキストロメトルファン,ジフェンヒドラミン,ブロムワレリル尿素を取り上げ,その健康影響について整理した。一方で,具体的な製品名が特定できないケースも多い。患者が使用しているOTC薬(製品名も含めて)についての積極的な聞き取り,カルテへの記載が重要ではなかろうか。

4 OTC薬を乱用する人への理解と支援
OTC薬症例は年齢が若く,女性の比率が高く,補導・逮捕歴が少ないといった特徴がある。対人関係によるストレスやネガティブな感情への対処が,OTC薬乱用の動機となっている。乱用に伴う健康被害をわかっていながらも,自己治療的にOTC薬の乱用を続けているケースが多い。

5 OTC薬の販売の現状と課題
OTC薬は,要指導医薬品,一般用医薬品(第1類~第3類医薬品)に分類されている。乱用の対象となっているOTC薬の多くが,指定第2類医薬品あるいは第2類医薬品であり,薬剤師による対面販売は必須ではなく,インターネットでも購入可能な状態になっている。
厚生労働大臣が指定した「濫用等のおそれのある医薬品」については一部販売個数が制限されているものの,規制されていないOTC薬も乱用・依存の対象となっている。実態に即したリストの見直しが急務である。

6 これからのOTC薬乱用対策
最後に,OTC薬乱用の根本的な解決に向けた,3つのアクション・プランを提案した。

(1)OTC薬乱用防止キャンペーン
「濫用等のおそれのある医薬品」に指定されたOTC薬については,製品パッケージに何らかの表示をつけて販売する。米国のStop Medicine Abuseキャンペーンが参考になる。キャンペーン実施後,青少年におけるデキストロメトルファン乱用の増加はみられていない。

(2)ゲートキーパーとしての薬剤師
OTC薬販売に従事する薬剤師(および登録販売者)をゲートキーパーとして育成し,悩みを抱えた本人(および家族)に気づき,声をかけ,専門的な支援につなぐための研修会を実施する。薬剤師向けのゲートキーパー研修は,自殺予防分野(向精神薬等の過量服薬対策)で既に実績がある。

(3)青少年向けの予防教育の充実
小学校~高等学校における「薬物乱用防止教室」を通じて,保健体育等の一般教科ではほとんど触れられていない医薬品乱用・依存について学ぶ機会をつくる。

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