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【識者の眼】「研修医の働き方改革⑦─研修医の労働時間とメンタルヘルスの関連性」西﨑祐史

No.5135 (2022年09月24日発行) P.58

西﨑祐史 (順天堂大学医学部医学教育研究室先任准教授)

登録日: 2022-08-31

最終更新日: 2022-08-31

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2024年度から導入される医師の働き方改革を見据えて、研修医の基本的臨床能力を最大限に開発する教育環境を把握することは大切な要素である。これまでの連載において、いくつかの視点から基本的臨床能力を鍛える至適な教育環境をエビデンスに基づいて紹介してきた。

研修医の基本的臨床能力と労働時間との関連性(連載第1回)、総合診療科ローテーションと研修医の基本的臨床能力との関連性(連載第3回)、研修医の基本的臨床能力と自己研鑽時間との関連性(連載第4回)、UpToDateの使用と研修医における基本的臨床能力の関連性(連載第5回)を評価した結果、次に示す教育環境が研修医の基本的臨床能力評価試験(General Medicine In-training Examination:GM-ITE)における高スコアと最も強く関連することが分かった:①労働時間は週平均60〜65時間(年平均時間外労働時間としては960〜1200時間)、②総合診療科ローテーション経験あり、③ 1日90分以上の自己研鑽時間、④日常的なUpToDateの使用。

今回は、研修医の働き方を考える上で、基本的能力の開発と同等に大切な要素である、メンタルヘルスと労働時間との関連性について解説する。

私たちは、2020年度基本的臨床能力評価試験(GM-ITE)のスコアと研修環境調査アンケートの結果を用いて、研修医のバーンアウト罹患割合と労働時間の関連性を検討した。バーンアウトの評価は、Mini-Z 2.0を使用した。6045名の研修医のデータを解析した結果、1週間の平均労働時間が90〜100時間の研修医は、60〜70時間の研修医と比較して、バーンアウトのprevalence ratio(PR)が1.36で95%信頼区間が1.11〜1.66と高値を示した。また、100時間以上の場合は、PRが1.36で95%信頼区間が1.10〜1.68と同様に高値を示した1)

本研究結果から、過度な労働時間は、研修医のメンタルヘルスに悪影響を与え、バーンアウトの罹患割合を増加させる可能性が示された。研修医のメンタルヘルスと臨床能力開発のバランスを考慮すると、1つの指標として、週平均労働時間は長くても80時間を超えないようにコントロールすることが重要であると、私は考える。

【文献】

1)Nagasaki K, et al:Sci Rep. 2022;12(1):10626.

西﨑祐史(順天堂大学医学部医学教育研究室先任准教授)[研修医][働き方改革][総合診療]

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