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糖尿病性足病変を有する患者への潰瘍発症予防手術の適応と方法 【血行不全と感染がなく,歩行可能,保存的治療で改善しないか再発を繰り返す場合が手術適応となる】

No.4823 (2016年10月01日発行) P.64

寺師浩人 (神戸大学医学部附属病院形成外科教授)

菊池 守 (佐賀大学形成外科診療准教授)

登録日: 2016-10-04

最終更新日: 2016-10-06

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  • 日本では,糖尿病罹患の約半数の患者が末梢神経障害を有しています。つまり,プレ潰瘍の人が全国に約500万人います。糖尿病性足潰瘍の治療は浸透してきましたが,末梢神経障害によるCharcot関節症,hammer(claw)toeや内反扁平足,アキレス腱短縮のため潰瘍発症を起こしやすい病態となっています。このような患者にとっては,潰瘍発症後の治療よりも潰瘍発症予防のための手術が良い適応になると思いますが,その適応と方法について,佐賀大学・菊池 守先生のご教示をお願いします。

    【質問者】

    寺師浩人 神戸大学医学部附属病院形成外科教授


    【回答】

    糖尿病性足潰瘍の治療において末梢神経障害は大きな問題です。感覚神経障害によって足部の痛みが感じられないために靴擦れや潰瘍を形成しても気づかないのはもちろんのこと,運動神経障害によって足趾の変形が引き起こされ,自律神経障害によって皮膚が乾燥してしまいます。

    末梢神経障害に伴うこれらのリスクを有する患者では,日常的に行う歩行という行動自体が潰瘍発生の原因となるため,積極的に潰瘍の発生を予防する必要があります。血行障害や感染をコントロールし潰瘍がやっと治癒に至ったとしても,これらの患者では再発のリスクが非常に高く,これを予防するためにも足趾の変形を修正する予防的手術が治療の選択肢に挙げられます。

    糖尿病患者に発生する代表的な足趾変形としてhammer toe(槌趾),claw toe(鉤趾)変形があります。これらに伴う足趾潰瘍,胼胝に対して2015年の糖尿病足病変に対する国際ワーキンググループ(International Working Group on the Diabetic Foot:IWGDF)ガイドラインでは,発生予防のために屈筋腱切断術を行うことを推奨しています。また,糖尿病に伴うアキレス腱短縮による足関節の背屈可動域制限によって起こる足底潰瘍に対してはアキレス腱延長術,関節の変形や骨突出による足底潰瘍に対しては関節形成や中足骨骨頭切除,骨突出切除などを再発予防のために行うことを推奨しています。

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