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高齢者糖尿病の血糖コントロール目標 [学術論文]

No.4823 (2016年10月01日発行) P.48

羽田勝計 (旭川医科大学名誉教授・客員教授/AMC西梅田クリニック理事)

登録日: 2016-10-04

最終更新日: 2016-10-06

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  • 2015年4月,「高齢者糖尿病の治療向上のための日本糖尿病学会と日本老年医学会の合同委員会」が発足した。わが国は現在,超高齢社会を迎えており,糖尿病症例も高齢化している。加齢とともに現れてくる身体的および精神的諸症状・疾患(老年症候群)を伴う場合には,糖尿病の治療において特別な配慮が必要であることも事実である。
    同合同委員会では,「高齢者糖尿病の診療ガイドライン」の策定をめざしているが,まず「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標」に関し議論を開始した。その結果は,両学会理事会の審議を経て,2016年5月に開催された,第59回日本糖尿病学会年次学術集会で発表するとともに,『糖尿病診療ガイドライン 2016』および『糖尿病治療ガイド 2016-2017』に掲載して頂いた。

    1. 高齢者糖尿病の増加と合同委員会設置の背景

    人の一生は,ある程度まで年齢により区分されている。高齢者とは,通常65歳以上を指し,後期高齢者医療制度では,65歳以上75歳未満を前期高齢者,75歳以上を後期高齢者と呼んでいる。
    一方,WHOでは,65歳以上を高齢者としている。ただ,同じ年齢でも,加齢とともに現れてくる身体的および精神的諸症状・疾患(老年症候群)を伴う場合には,たとえば糖尿病の治療という面では特別な配慮が必要であることも事実である。老年症候群には,認知機能低下,ADL低下,サルコペニア,フレイルなどが含まれている。
    わが国は現在,超高齢社会を迎えており,糖尿病症例も高齢化している。たとえば,糖尿病データマネジメント研究会(Japan Diabetes Clinical Data Management Study Group:JDDM)の調査では,2型糖尿病症例の平均年齢が2013年に65.14歳と,65歳を超えたことが示されている(図1)1)。図1では2型糖尿病症例は毎年0.25~0.4歳高齢化しており,16年には平均年齢が65歳後半~66歳前半になっていると推定される。
    第1回合同委員会の冒頭では,日本糖尿病学会・門脇 孝理事長から,上記の状況をふまえ,日本糖尿病学会と日本老年医学会が,高齢者糖尿病の個々の病態に応じた,より個別の管理目標の設定をはじめとする診療指針を策定することによって,わが国の高齢者糖尿病のQOL改善や寿命の延伸のためにいっそうの診療の向上を図るべく,合同委員会を設置し,継続的な連携を進めることで合意したことが述べられた。

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