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【識者の眼】「老健はどうあるべきか」武久洋三

No.5119 (2022年06月04日発行) P.59

武久洋三 (医療法人平成博愛会博愛記念病院理事長)

登録日: 2022-05-17

最終更新日: 2022-05-17

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私は1988年の老健誕生以来、各地で老健を開設し、現在、都市部や地方などいろいろな立地で12箇所運営している。2018年4月に施行された改正介護保険法で、老健の役割として「要介護者の在宅復帰を目指す」ことが明確化され、その機能を維持することを厚労省から要請されている。在宅復帰機能は老健誕生時からの特徴であり、ゆえに自宅と病院の中間施設と呼ばれてきた。

しかし2000年の介護保険制度施行開始以来、様々な民間の高齢者入所施設が数多く開設されている。ほとんど長期の入所希望者が多い。2020年9月末時点の日本の老健の利用率は88.5%であり、直近5年間の利用率は90%を下回っている。しかも同年の赤字施設割合は28%となっている。

老健は2018年の介護報酬改定において、10の評価項目からなる「在宅復帰・在宅療養支援等指標」を定め、重度の要介護者を多く受け入れ、在宅復帰実績の高い施設をより高く評価してきた。現在、日本では老健の入所定員は37.3万床であるが、すべての老健を単一機能に誘導するのは、もはや限界に達している。

老健は先述の10項目の点数などの要件に応じて5つに分けられているが、日本の人口は減少している。地方では高齢者すら減少している。また、地方では病院や特養はなく、老健だけしかない町村もある。そのような地域では特養は終の棲家、老健は短期入所などと機能分化さえできないので、多機能な老健にならざるをえない。また、特養しかない町では要介護3以上でないと入所できないので、より軽度の方は他の地域に行かなければならない。都市部と地方の大きな落差が顕著になっているのだ。もはや日本全国を同一基準で評価することはできなくなっている。

現在、高齢者のみの世帯は夫婦のみ世帯と単独世帯を合わせると60.1%になっており、高齢者夫婦のみの世帯でも夫婦のどちらかが要介護者になれば在宅での生活は実質困難である。

2018年に新たに介護医療院が発足したが、2021年12月末日現在、約4万床となっている。中には老健から介護医療院への転向も進んでいるのだ。どうしても巨大な集団となった老健に単一機能を強要するには限界がある。多機能な老健を認め、それぞれに評価してゆくべきではないか。

武久洋三(医療法人平成博愛会博愛記念病院理事長)[老健施設][介護医療院]

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