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【識者の眼】「日本でもマスクを外せないのか? 例えば屋外で」和田耕治

No.5112 (2022年04月16日発行) P.63

和田耕治 (国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)

登録日: 2022-04-08

最終更新日: 2022-06-01

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米国の野球やショーの報道を見ているとマスクをしている人はほとんどいない中、「日本でもマスクを外せないのか?」という問いがある。不織布製マスクを着用することは、会話の際に自分の飛沫を飛ばさないようにする点においては効果が高い。しかし、飛沫を吸い込まないようにするということについては、マスクと顔の間から空気が入ってくるため効果は限定的である。

日本に限らず海外でも、マスク着用の緩和にはそれぞれ苦労しながら行っている。いくつかの海外の状況も交えて外せるような場面を挙げてみる。

マスクを外せる場面としてのキーワードは「屋外」である。周囲に人がいない、あまり話さないような場面ではマスクをする必要がない。たとえば、近所の屋外で行う犬の散歩ではマスクは必要ない。近所の人と話すことがあればそのときだけマスクを着用すればよい。

シンガポールでは、屋外でのマスク着用は任意(ただし、推奨される)としている。さらに屋外を「集合住宅の共用デッキ、店舗ブロックの通路、バス停、半オープンのバスターミナルなど、保護されているが一般に開放されている場所」と細かく定義している。ニュージーランドは地域の流行状況に応じて屋外はマスクの着用は必要ないという表現をしている。

残念ながら、屋内においては複数の人がいるようなところでは、マスクを必要とするところが多い。ただ、図書館など会話がほとんどないところでは、マスクをしないという考えもできる。

特に応援したいのは子どもたちの場面である。マスクを着用した顔しかお互いに知らないということもある。学校活動でも屋外での体育や休み時間、教室でもあまり話をしないような場面では外せることもある。

マスクを外すとまた着用することが不潔だとか、手元からなくなるといった新たな課題を起こしそうであるが、何よりもこうした対策の緩和は、タイミングと場所が重要である。

感染が一時的に落ち着いていても時間をかけ過ぎると「リバウンドの兆しがある」となり、そうした際に緩和を発表すると異なる意見が出てくる。地方で感染が比較的落ち着いているような地域から始めるのもよいであろう。この1年を振り返っても47都道府県の感染者の数には差があり、東京や大阪と比べて少ない地域で始めてはどうだろうか。

この約2年間はあらゆる場面でマスクを着用しており、外すとなるとそれなりに勇気がいるため、国などからの発信も必要であろうが、市民の力でも何らかの実現をめざしたい。

和田耕治(国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)[新型コロナウイルス感染症]

【関連動画】
討論Pro×Pro「新型コロナ対策 出口戦略のシナリオ」(和田耕治×今枝宗一郎)

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