株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

塗布剤混合のメリットとデメリット

No.5108 (2022年03月19日発行) P.52

古田勝経 (小林記念病院褥瘡ケアセンター長/ 国立長寿医療研究センター研究員)

登録日: 2022-03-22

最終更新日: 2022-03-15

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

ステロイドの塗布剤と保湿系の塗布剤を混合して処方する先生がいます。2剤を処方する場合,混合したほうがよいのでしょうか,それともしないほうがよいのでしょうか。塗布剤混合のメリットとデメリットを教えて下さい。
(千葉県 K)


【回答】

【メリットは外用コンプライアンスの向上。デメリットは基剤の分離・変質,効果の減弱,細菌の繁殖などが挙げられる】

外用薬の多剤併用では,外用コンプライアンスを考慮して,混合するケースが多く認められます。しかし,皮膚に使用するステロイドと保湿系の外用薬の混合は,問題になりやすい組み合わせになります。

ステロイド軟膏と水中油型の乳剤性基剤では,軟膏の油と水中油型の水が混合することで,肉眼的には変化はみられませんが,顕微鏡で確認すると乳化の破壊が認められます。外用薬の混合では基剤の分離や変質が最も多いのですが,それだけではなく,含量の減少も起こる可能性があります。また,基剤によっては空気の混入が問題になることがあり,特に水中油型の乳剤性基剤では混入率が高くなります。保湿を目的としたクリームではなおさらです。

なお,軟膏とクリームの混合で大きな問題となるのは,この“乳化の破壊”です。乳化の破壊は透過性に影響するため,効果にも影響します。ヒトの血管収縮試験においても,効果が減弱することが示されています。また,長期に処方される場合では,減弱がより進行することが考えられます。

さらに,混合により防腐剤の稀釈が起こり,細菌の繁殖が増加することも予想されます。冷蔵庫内の保管でも,増殖速度は遅くなるものの増殖しないわけではないので,長期処方は避けるべきであり,使用時に混合することが適切となります。

混合や稀釈する場合,混合可であっても基剤が分離するケースもあります。ジェネリック医薬品の使用増加に伴い,データが不足しているため不明なことも多くなっており,主薬は同じでも基剤や添加物の種類が異なることによって,安定性などに問題を起こすと考えられています。

外用薬の混合は広く行われていますが,基剤や剤形を理解し,選択することが求められます。また,医薬品名から基剤を判断することも困難な場合があるため,それらに注意して混合しなければなりません。混合せずに,重ね塗りすることが必要な場合もあります。

【参考】

▶ 大谷道輝, 他:Derma No.314-手元に1冊!皮膚科混合・併用薬使用ガイド. 大谷道輝, 編. 全日本病院出版会, 2021.

【回答者】

古田勝経 小林記念病院褥瘡ケアセンター長/ 国立長寿医療研究センター研究員

関連記事・論文

関連書籍

もっと見る

関連求人情報

関連物件情報

もっと見る

page top