株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

【識者の眼】「筋の悪い看護師処遇改善」邉見公雄

No.5110 (2022年04月02日発行) P.61

邉見公雄 (全国公私病院連盟会長)

登録日: 2022-03-14

最終更新日: 2022-03-14

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

今回、岸田首相の肝いりで看護師の処遇改善が行われることになった。その方向や決定は評価すべき見識ある判断である。しかし、その方法は現場に戸惑いや混乱をまねいている。

まず1つは、すべての看護師が頂けるものと早合点で期待してしまったことである。当局の説明不足、舌足らずと、いつもながらのメディアの未成熟による早とちりの結果である。国立病院機構のように、複数の病院を抱える組織は明暗可否が分かれてしまう。たとえば、小生の関係する兵庫県立13病院では3箇所はもらえない。コロナ受け入れ有無なら納得だが、救急車搬入200台/年という何の関係もないものが要件に入った。県立がんセンターはほぼ全員紹介患者で、救急車で来院は稀である。多分予算ありきで、それに合わせるための無理筋の決め方であろう。4月の人事異動で昇進転勤したナースの給与が下がるケースも続出するはずである。そこまでの配慮は忙しすぎて無理なのだろうか? また、国公立病院の給与は人事院勧告に従うことになっている。ところが今回は診療報酬からと。本当に上がっているのか? 消費税補填不足の時の悪夢を思い出す。事務局も半信半疑。やはり補助金が本筋、妥当。

さらに問題なのは、薬剤師が対象職種に入っていないのである。理由は給与が高いからと。どうも調剤薬局の方を含めての平均給与らしい。病院薬剤師は決して高給ではない。6年制教育の点からも割安であり、ワクチンの保管などで今回大変頑張って頂いたのに残念至極である。また、チーム医療の現場からすれば、全員参加、一丸で事務職も発熱外来やPPEの確保、面会や電話対応など大活躍なので、これにも違和感。看護職が妬まれるかも。

とにもかくにも、今回の診療報酬改定マイナス0.94%(全体)は血も涙もない。ロシアのような感じ。我々病院はウクライナ状態なのだろうか? 新しい資本主義の中核部隊は医療・介護・保育・教育と考えていただけに、内閣変われど、今まで通り全員留任の財政制度等審議会の方針踏襲。見事な期待外れ。ウクライナ問題と違ってメディアや国民の連帯は期待薄と、がっかり落胆の3月である。

邉見公雄(全国公私病院連盟会長)[診療報酬改定]

ご意見・ご感想はこちらより

関連記事・論文

もっと見る

関連物件情報

もっと見る

page top