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【識者の眼】「日本医師会も正念場か?」小林利彦

No.5095 (2021年12月18日発行) P.57

小林利彦 (浜松医科大学医学部附属病院医療福祉支援センター特任教授)

登録日: 2021-12-01

最終更新日: 2021-12-01

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医師の働き方改革に関する各種準備作業のうち、「『評価機能』の設置準備に係る委託事業」と「面接指導実施の準備に係る委託事業」、「『C-2水準の審査組織』の準備に係る委託事業」は現在、日本医師会が主導している。いずれも、2024年4月に向けて、全国の医療関係者が最もその動向を気にしている領域での事業であり、少しでも多くの情報を速やかに収集し準備を急ぎたいと考えているはずである。

現時点でほぼ確定していることとして、2022年度から始まる医療機関勤務環境評価センターによる書面審査が必要とされる医療機関が全国に1200〜1500施設ほどあり、全国を7ブロックに分けて、各都道府県に医療サーベイヤーと労務管理サーベイヤーを一定数配置するという方向性がある。ちなみに、医療サーベイヤー(医師)の推薦対応は各都道府県医師会に委ねられ、大学病院への応対者は全国医学部長病院長会議との連携のもと進められる。

都道府県医師会へ推薦を求める医療サーベイヤーの条件としては、①病院における管理職(院長・副院長・診療部長等)経験5年以上、②医療勤務環境改善支援センターの業務に携わった経験、③日本医療機能評価機構・日本医学教育評価機構などのサーベイヤー経験などが挙げられている。実際、この12月からは、全国の16施設で模擬審査が行われる予定である。また、B・連携B・C水準の医療機関で義務付けられる追加的健康確保措置における面接指導に関しては、既存の産業医を含め、全国で8000人ほどの面接指導実施医師の確保が必要とされ、対応する医師へのe-learning研修も次年度には予定されている。さらに、前回の本コラム(No.5090)でも取り上げた「C-2水準の審査組織」に関しても、日本医師会が中心となり、モデル審査の実施等が今後予定されている。

地域の医療提供体制を左右しかねない「医師の働き方改革」への準備作業を進められる団体は日本医師会しかないという意見もある程度理解はできるが、日本医師会員の半数を占める勤務医の多くが病院管理者など執行部クラスであることには危惧もある。若い医師の働き方に対する考え方が大きく変わってきている状況下、臨床現場の実態を踏まえた調整等がどこまでできるのか、日本医師会の力量が試されているとも言える。

小林利彦(浜松医科大学医学部附属病院医療福祉支援センター特任教授)[医師の働き方改革]

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