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全国から注目、新型コロナ自宅療養者にオンライン診療提供「品川モデル」【まとめてみました】

No.5082 (2021年09月18日発行) P.14

登録日: 2021-09-15

最終更新日: 2021-09-15

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大で、オンライン診療の活用が進んでいる。東京都医師会は9月から多摩地域をテストケースにCOVID-19の自宅療養者に対し、夜間帯にオンライン診療システムを活用した新たな医療支援を開始している。都医が取り組みの参考としたのが「品川モデル」。本欄では、7月から本格運用を開始、重症化予防への期待が高まっている品川モデルの仕組みについて紹介する。

保健所、医療機関、患者にメリット

品川モデルとは、品川区や品川区医師会、荏原医師会、品川区薬剤師会が協力して構築した、オンライン診療を活用した自宅療養者または入院調整中の陽性者への医療支援システム。4月から試行的に運用し、7月から本格的にスタートした。夜間に対応する都医のシステムとは異なり日中に診察を行う。現在区内の13施設、18人の医師が参加している。

品川モデルの特徴は、保健所と医療機関、患者の3者がメリットを享受できる点にある。保健所にとっては患者に対応できる医療機関を探すやり取りにかかっていた手間の大幅な削減につながり、本来行うべき患者の健康観察や濃厚接触者の追跡などの業務に時間を割くことができる。

医療機関にとっては往診に比べ移動時間が節約でき、感染リスクもない形で診療が行えるメリットがある。またコロナ禍で患者の受診抑制傾向が続く中、医業収益が減少している医療機関にとっては、新たな収入源として一定の効果が見込める。

患者にとっては、保健所の管理下で医療への自由なアクセスが制限されている中で、いつでも自宅で受診できるという安心感が大きい。医療資源が逼迫している地域では、症状が急速に悪化しても往診をすぐに受けることは困難で、入院しないと医師の診察が受けられないという状況の緩和につながる。

「仮想待合室」の患者を順番に診療

は品川モデルのフロー。①保健所が重症化リスクの低い無症状、軽症の自宅療養患者のスマートフォンなどに対して、オンライン診療に登録するURLをSMSで送信、②患者はURLにアクセスしネット上の「仮想待合室」で順番を待つ、③患者が待合室に入ると参加医師のPCやタブレットに通知が届き、対応可能な医師がオンライン診療を実施、④処方が必要な場合には、処方箋を発行(薬は薬局から宅配)─という流れになる。医師が入院が必要と判断した場合には保健所に連絡する。

オンライン診療の対象となるのは、COVID-19患者で、宿泊・自宅療養者となった患者本人または関係者からの求めに応じ、保健所がオンライン診療の必要があると判断した場合。原則として1回限りの診療とする。ただし、新たな症状が疑われたり改善しているものの症状が続くなど保健所がオンライン診療で対応可能と判断した場合は、2回目の診療を実施することができる。

参加する医師の条件は、厚生労働省が定めるe-ラーニング形式のオンライン診療に関する研修を終了していること。参加を希望する医療機関は品川区医師会にオンライン診療研修修了書、登録表を提出し、IDとパスワードを受け取る。

時間帯は原則、平日の9時から17時と土曜日の9時~12時までで日祝日は除く。通信場所は問わない。時間的拘束はなく1件のみの対応でも可能。クリニック休診日の診察も可能だが、休日加算や夜間早朝加算は算定できない。担当医師の所属医療機関での保険診療という扱いになる。

処方は、品川区薬剤師会より提供された宅配が可能な薬局リストから患家の住所地に近い薬局を患者と決定する形だ。

参加準備はPCとタブレットのみ

参加医療機関の事前準備は、ウェブカメラやマイク機能を付けたPCまたはタブレットのみ。オンライン診療システムはMICINの「curon Type-C」を採用。一般的なオンライン診療ではアプリケーションのダウンロードが必要だが、「curon Type-C」はブラウザから誰もが利用できるという特徴がある。

診療報酬の算定は、基本的に初診扱いとなる。通常の初診料(288点)ではなく、電話・オンライン診療の初診における特例的扱いの214点を算定する。診察を担当することになった患者が、元々継続的に診療している自院のかかりつけ患者であった場合の診察に当たっては、初診料ではなく電話等再診料(73点)を算定。また8月16日に送付された事務連絡で、1日に1回に限り二類感染症患者入院診療加算(250点)の算定が可能になった。

病態ごとの処方例マニュアルで質を担保

品川モデルのもう1つの特徴は、品川区医師会が東京品川病院呼吸器内科監修のもと、病態ごとの処方例マニュアルを作成している点にある。マニュアル作成の狙いは、処方を一般化することで医師による差をなくし、COVID-19診療に不慣れな医師でも感染症専門医と同じ治療薬選択が可能にすることに加え、各医師にコロナ治療における責任を負わせないようにすることにある。例えば、咳や痰のみの場合はオンライン診療、呼吸困難がある場合は往診、明らかな肺炎の所見を認めた場合は病院受診という棲み分けがなされている。

9月に入り、東京では新規感染者が前週に比べ減少傾向にあるが、依然として重症者病床は逼迫している。COVID-19の治療においては重症化予防が重要になる。自宅療養患者に早い段階で適切な医療が提供できる品川モデルのような医療支援が全国に広がることが期待される。

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