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特集:脳梗塞患者を救う─機械的血栓回収療法の進歩

No.5073 (2021年07月17日発行) P.18

波止聡司 (兵庫医科大学脳神経外科)

吉村紳一 (兵庫医科大学脳神経外科主任教授)

登録日: 2021-07-16

最終更新日: 2021-07-15

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波止聡司
2013年熊本大学医学部卒業。同大学脳神経内科に入局し,2020年4月より兵庫医科大学病院脳卒中センターに国内留学。

吉村紳一
1989年岐阜大学医学部卒業。同大学脳神経外科入局。国立循環器病研究センター,MGH,チューリヒ大学を経て2013年より現職。

1 「虚血コア」と急性期脳梗塞治療のターゲット「ペナンブラ」
①脳梗塞症例において,「虚血コア」は既に細胞死をきたしており,救済困難な領域である。一方,「ペナンブラ」は活動を停止しているが,細胞死には至っていない休眠状態の領域であり,急性期脳梗塞治療のターゲットである。
②「rt-PA静注療法」や「機械的血栓回収療法」の目的は,できるだけ早く再灌流させて,ペナンブラ領域を細胞死から守ることである。
③虚血コアおよびペナンブラ領域の判定には,脳画像自動解析ソフトウェアである“RAPID”が有用である。
④代表症例提示。

2 rt-PA静注療法の限界と,機械的血栓回収療法の登場
①rt-PA静注療法では,最終健常確認時刻が不明の場合,MRIのFLAIR画像で高信号域が出現していなければ,投与の検討が可能である。
②rt-PA静注療法は,内頸動脈や中大脳動脈近位部といった主幹動脈閉塞症例に対する有効性が低い。
③2015年に機械的血栓回収療法の有効性が確立し,主幹動脈閉塞症例に対する標準的治療として実施可能となった。

3 機械的血栓回収療法に使用されるデバイスと手技の進化
①機械的血栓回収療法に使用するステントリトリーバー,および吸引カテーテルは,現在も新しいデバイスが続々と登場している。
②機械的血栓回収療法を行う方法として,ステントリトリーバー単独で実施する方法,吸引カテーテルによる方法(ADAPT),両者を組み合わせた方法(combined technique)があり,症例ごとに術者が最も良いと考える方法を選択する。

4 機械的血栓回収療法の適応の拡大
①主幹動脈閉塞症例において,機械的血栓回収療法の適応は最終健常確認時刻から24時間以内に拡大された。
②RAPIDや,虚血コアの範囲を半定量的に評価するスコアであるASPECTSを用いて,慎重に適応を判断する必要がある。

5 機械的血栓回収療法の最新の知見
rt-PA静注療法をスキップして機械的血栓回収療法を行うほうが,転帰の改善をもたらすかどうかについて,2つのランダム化比較試験(RCT)(DIRECT-MT,SKIP study)で解析が行われた。その結果,DIRECT-MTでは非劣性が示されたが,SKIP studyでは非劣性が証明されない結果となり,明確なエビデンスとはならなかった。

6 機械的血栓回収療法の今後の課題
①脳底動脈を含めた後方循環系の閉塞症例に対する機械的血栓回収療法の明確なエビデンスは確立していないが,2020年に発表された3つのRCTの結果から,重症例に関しては機械的血栓回収療法が有効である可能性が示唆されている。
②広範囲の脳梗塞症例に対する機械的血栓回収療法の明確なエビデンスは確立していないが,現在複数のRCTが行われており,その結果が待たれる。

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