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急性尿細管壊死・腎皮質壊死[私の治療]

No.5073 (2021年07月17日発行) P.35

渡辺裕輔 (埼玉医科大学国際医療センター血液浄化部・腎臓内科准教授)

岡田浩一 (埼玉医科大学病院腎臓内科教授)

登録日: 2021-07-15

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  • 急性尿細管壊死(acute tubular necrosis:ATN)は,近位尿細管を中心とする尿細管上皮細胞が強い傷害を受け,壊死・変性した状態である。脱落した尿細管上皮細胞による尿細管腔の閉塞などにより糸球体濾過量(GFR)が低下する。ATNの原因は虚血性と中毒性に大別される。虚血性は腎血流の低下が高度もしくは遷延した場合に生じる。中毒性は外因性(アミノグリコシド系抗菌薬,ヨード造影剤,白金抗癌剤などの薬剤)と内因性(横紋筋融解症によるミオグロビン尿症,骨髄腫による円柱腎症,腫瘍崩壊症候群による尿酸結晶性尿細管閉塞など)に分類される。
    一方,腎皮質壊死は,腎皮質に存在する糸球体,尿細管,間質が広範に壊死に陥るものである。高度の腎虚血による腎細動脈の障害,血栓形成が機序と考えられている。妊娠中の胎盤早期剝離や出産時の出血性ショックなど産科領域の大量出血が原因として知られており,母児ともに合併する可能性があるが,現在その発症頻度は低いとされている。

    ▶診断のポイント

    ATN,腎皮質壊死はいずれも重篤な腎実質障害であり,臨床経過としては急性腎障害(AKI)を呈する。AKIは血清クレアチニン値の上昇もしくは尿量の減少により診断され,重症度が判定される。ATNの原因としては上述のように虚血性と中毒性が主なものであり,臨床経過や投薬歴などから原因が推定される場合が多い。鑑別として,画像検査で尿路閉塞を否定し,尿沈渣所見などから急速進行性糸球体腎炎,急性間質性腎炎などを除外する必要がある。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    AKIをきたした原因疾患への治療とともに,重症AKIに伴う合併症に対する治療が必要になる。ATN,腎皮質壊死によるAKIに対する具体的な対応としては,①バイタルサイン,心電図,酸素飽和度のモニタリング,膀胱バルーン留置による尿量測定を行う,②血液検査で血清クレアチニン値やカリウム値,動脈血液ガス分析により重炭酸イオン濃度などをモニタリングする,③適切な輸液や輸血などにより,体液量と腎血流量を維持する,④可能な限り腎毒性薬剤を中止し,腎排泄性薬剤は投与量を減量するか使用を避ける,⑤循環動態が不安定な場合は,集中治療室への入室を考慮する,などが必要である。

    乏尿・無尿を呈するAKIでは,適切な治療介入を行わないと短時間に致死的な状況に陥る可能性があり,特に緊急で透析を行う必要があるか否かの判断が重要である。透析の絶対適応となる病態は,薬物療法に抵抗性の体液過剰(肺水腫),心電図変化を伴う高カリウム血症,高度の代謝性アシドーシス,尿毒症症状などである。

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