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ヘイリー・ヘイリー病(家族性良性慢性天疱瘡)[私の治療]

No.5072 (2021年07月10日発行) P.42

中野 創 (弘前大学医学部附属病院皮膚科准教授)

登録日: 2021-07-10

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  • 本疾患は鼠径部,陰股部,腋窩等の間擦部に限局性のびらん性紅斑局面を生じる常染色体優性遺伝性疾患である。カルシウムポンプSPCA1をコードするATP2C1が責任遺伝子である。遺伝性疾患であるが,青年期以降に発症することが多い。びらん面に細菌感染を伴うことが多く,真菌,ウイルス感染を伴うこともあり,治療に工夫が必要である。時に汎発性に皮疹が生じる場合がある。

    ▶診断のポイント

    間擦部に限局した皮疹,青年期以降の発症,家族歴,病理組織で“崩れかかった煉瓦壁”と形容される基底層上の水疱形成がポイントである。遺伝子診断でATP2C1に変異が同定されれば確定診断ができる。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    治療は対症療法にとどまる。完治させるよりも,よりよい状態に改善させることを目標にする。局所の不清潔,高温,湿潤,衣服による摩擦等の物理的刺激が悪化因子となる。多汗を生じやすい夏期に悪化しやすい。常に患部を清潔に保つように指導した上で治療を行う。

    外用薬はステロイド,タクロリムス,活性型ビタミンD3などが用いられる。局所の湿潤が強い場合は,亜鉛華軟膏を重層塗布する。びらん面保護の目的で,シリコン製被覆材を用いてもよい。そのほかボツリヌス毒素Aの局所注射,エキシマライトによる光線療法が有効との報告がある。用薬の効果が乏しい症例,あるいは汎発性の症例には内服薬を併用し,ステロイド,レチノイド,シクロスポリンが用いられる。そのほか,アプレミラスト,ドキシサイクリン,ミノサイクリン,naltrexone(わが国では未承認)等の有効例が報告されている。

    局所に細菌感染が生じた場合は抗菌薬を,カンジダ感染が生じた場合は抗真菌薬を用いる。単純ヘルペス感染によるカポジ水痘様発疹症が合併した場合は,抗ウイルス薬の全身投与が必要である。外用薬で症状が悪化している場合は,当該薬により接触皮膚炎が生じている可能性も考慮する。治療抵抗性の症例や乳頭状増殖を伴った症例では,炭酸ガスレーザーあるいはYAGレーザー照射による病変部の剝削術,外科的切除兼植皮術が行われる。治療は保険適用外のものもあるため,インフォームドコンセントを十分行う必要がある。

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