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【一週一話】70年を経て:デング熱の再来

No.4719 (2014年10月04日発行) P.51

高崎智彦 (国立感染症研究所ウイルス第一部第2室室長)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-03-23

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  • デング熱(dengue fever)は,ヤブカ(ネッタイシマカ,ヒトスジシマカ)によって媒介されるウイルス感染症である。デングウイルスの生活環は,ヒト─蚊─ヒトであり,日本脳炎におけるブタのような増幅動物は存在しない。デングウイルスはヒトの体内で十分量に増幅し,その血液を吸った蚊が感染蚊となる。したがって,人口密度の高い都市部や観光地で流行することが多い。

    日本では太平洋戦争中の1942年から1945年にかけて,長崎,佐世保,広島,呉,神戸,大阪などの西日本の諸都市で20万人規模のデング熱流行が報告された。その後,南方戦線でデング熱に罹患した帰還兵の減少,焼夷弾に備えた防火水槽の減少などによってヒトスジシマカの絶対数が減少したことを要因として,デング熱流行は認められなくなった。

    デング熱は,突然の高熱で発症する。その症状は,発熱・発疹・痛みが3主徴である。発疹は解熱傾向とともに出現し,骨関節痛・筋肉痛など,その痛みはかなり激しく,流行地ではbreak-bone feverとも呼ばれる。あまりの痛みのため,デング後うつ病という状態になることもある。そのほかに下痢や嘔吐をきたすことがあるが,デング熱が風邪やインフルエンザと同様の症状だという認識は間違いであり,咽頭痛,咳,鼻汁といった上気道症状は,通常伴わない。血液検査所見では,発病後数日で白血球減少とともに急激に血小板減少(10万以下を目安に)をきたす。そのほか,GOT,GPT,LDHの上昇をきたすこともある。血小板減少の頻度は,6~7割程度であるとされているが,この数字よりはかなり高率である。おそらく,データをまとめる際に発病初期や回復期の検査データが含まれていると考えられる。

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