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【一週一話】卵円孔開存と奇異性塞栓

No.4710 (2014年08月02日発行) P.55

河村朗夫 (慶應義塾大学医学部循環器内科講師)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-03-28

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  • 卵円孔とは心房中隔の開口部で,胎盤を経由して供給される酸素を多く含む血液を,右心房から左心房を経て胎児の脳へと導くための構造である。出生後,卵円孔は自然に閉鎖するが,成人に達しても自然閉鎖しない場合を卵円孔開存(patent foramen ovale:PFO)と呼んでいる。PFOの頻度は高く,成人の10~25%にみられる。

    PFOでは何か健康上の問題が生じるのだろうか。実は,PFOは若年者の脳梗塞,ダイバーの潜水病などに深く関与していると考えられている。長時間の飛行機旅行などの際には,下肢静脈にしばしば小血栓が生じる。しかし,血栓は通常ごく少量であり,下肢静脈から遊離して右心房に流れてきても,豊富にある肺の毛細血管に吸収されるため深刻な問題が生じることは少ない。不幸にして血栓量が多い場合にのみ,いわゆるエコノミークラス症候群(肺塞栓)を生じることになる。ところが,PFOがあると,ごく微量な血栓であっても動脈系に流出する可能性があり,非常に危険である。脳血管が閉塞すると,ごく微量な血栓であっても脳梗塞をきたすことになる。こうした静脈内で生じた血栓がPFOなどを介して動脈系へと流出し,動脈閉塞が生じる病態を奇異性塞栓と呼ぶ。

    PFOによる奇異性塞栓の病歴上の特徴では,長時間の飛行機旅行,排便,排尿,嘔吐直後の発症,起床時の発症,脱水,先天性凝固異常などが挙げられる。排便,排尿,嘔吐の際は右房圧が左房圧より上昇し,血栓のPFOの通過が容易になるものと考えられている。

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