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「患者申出療養」は混合診療全面解禁につながるか? [深層を読む・真相を解く(35)]

No.4707 (2014年07月12日発行) P.15

二木 立 (日本福祉大学学長)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-03-28

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  • 6月10日、田村憲久厚生労働相と稲田朋美行政改革相は、安倍首相の指示を受けて「患者申出療養(仮称)」を創設することで合意し、同日、安倍首相は慶應義塾大学病院視察時にそれを公表しました。この方針は、6月13日の規制改革会議第2次答申、24日の閣議決定「規制改革実施計画」にそのまま盛り込まれました。

    本稿では、まず「患者申出療養」が規制改革会議が3月27日に提案した「選択療養制度」原案(以下、「原案」は略)とは内容的には別物であることを指摘します。次に、この制度が閣議決定された「政治的背景」について推察します。三番目に、今後「患者申出療養」が制度化された場合の影響を予測し、それがすぐには「混合診療全面解禁」につながらないことを指摘します。

    「選択療養制度」と「患者申出療養」は別物

    「患者申出療養」が、形式的には「選択療養制度」を「起点」としているのは確かです。しかし、内容的には全く別物と言えます。

    本連載㉜「規制改革会議の『選択療養制度』創設提案をどう読むか?」(本年4月19日号)で指摘したように、「選択療養制度」は医療機関の限定も、医療行為の限定も含まない「医療の安全や質の保証への配慮を欠いた、実にアブナイ提案」であり、「混合診療の事実上の全面解禁を意味」していました。

    それに対して、「患者申出療養」には、以下の3点の変更・確認が加えられ、現行の保険外併用療養費制度の枠内での改革であることが明示されました。①「選択療養制度」では安全性・有効性は事実上「事後確認」とされていましたが、「患者申出療養」では「国において、専門家の合議で安全性・有効性を確認する」とされ、「事前確認」の原則が守られました。②「選択療養制度」では、それを実施する医療機関の限定は全くされませんでしたが、「患者申出療養」では、「対応医療機関」は「前例がない診療」については臨床研究中核病院に限定されることになりました。「前例がある診療」についても、実施を希望する「患者に身近な医療機関」が、前例を扱った臨床研究中核病院に申請することになりました。③「選択療養制度」では、それで認められた医療の保険収載への道が曖昧でしたが、「患者申出療養」では、「保険収載に向け、治験等に進むための判断ができるよう、実施計画を作成し、国において確認するとともに、実施に伴う重篤な有害事象や実施状況、結果等について報告を求める」とされました。これは、現行の「先進医療」の扱いに準じています。安倍首相も6月10日の記者会見で、「安全性や有効性が確立すれば、最終的には国民皆保険の下、保険の適用を行っていく」と明言しました。

    この限りでは、規制改革会議・首相・官邸が「名」を取り、厚生労働省がギリギリ「実」を取ったと言えなくもありません。

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