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【一週一話】薬剤吸着徐放性ソフトコンタクト レンズの臨床における有用性

No.4695 (2014年04月19日発行) P.55

柿栖康二 (東邦大学医療センター大森病院眼科)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-04-05

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  • 病気の治療においては,必要なときに,必要な量の薬剤を,必要な病巣に選択的に送り届けることが理想的な薬剤伝達である。そのため,がん治療をはじめとした様々な分野において新しいドラッグデリバリーシステム(drug delivery system;DDS)の研究開発が活発に行われている。薬剤吸着徐放性ソフトコンタクトレンズ(drug released soft contact lens;DR-SCL)は眼科領域において新しいDDSとして期待されており,1960年代より研究開発が始まっている。

    眼科領域の治療における薬剤伝達手段としては点眼,眼軟膏,局所注射,そして内服,点滴による全身投与などがある。点眼は投与方法が比較的容易であり全体の約90%を占めているが,欠点もある。点眼投与による薬剤は1~7%しか眼内へ伝達されない。それは,点眼液中の薬剤は点眼後に涙液によって希釈され,速やかに涙道によって排泄されてしまうためである。さらに,点眼直後は有効濃度以上に達するが,すぐに希釈されてしまうため有効濃度を維持することができない。一方,眼内移行しなかった薬剤は,結膜や鼻粘膜から血行系に吸収されるため,全身に対する副作用も起こしうる。

    また点眼薬の種類や使用回数の増加に伴い,患者の点眼コンプライアンスを低下させるという問題点も抱えている。緑内障のような慢性疾患を持つ患者の場合,毎日の点眼が必要であり,角膜潰瘍などの重症感染症の患者では,有効濃度を維持するために1時間ごとに点眼を必要とされることもある。そのため,患者の点眼に対する負担はかなり大きくなっている。

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