強度近視は国際的に統一された定義はないが,一般には等価球面値-6D以下あるいは眼軸長26.5mm以上の近視と定義され,日本人を含むアジア人に多い。強度近視のうち,眼底にびまん性網脈絡膜萎縮以上の萎縮あるいは後部ぶどう腫を伴うものを病的近視と呼び,極端な眼軸延長によって強膜や脈絡膜が菲薄化し,網膜や視神経が過剰に伸展することで様々な合併症を生じる。
・病態:強度近視の病態は,眼軸延長による眼球形状の変化である。眼軸長1mmの延長はおよそ3Dの近視化に相当する。眼軸延長のメカニズムは,遺伝的要因と環境要因の両方が関与すると考えられている。環境要因として,長時間の近見作業や屋外活動が少ないことなどが報告されている。
・症状:近視の進行に伴い裸眼視力が低下する。病的近視では,網膜,特に黄斑部障害による中心視力低下,歪視をきたす。また視神経障害を生じ,視野障害を呈することもある。
・合併症:
①近視性黄斑症:META-analysis of Pathologic Myopia(META-PM)Study Groupが,近視性黄斑症の重症度分類をしており,病的近視はこのカテゴリー2以上の萎縮性変化のことを指す。
②近視性黄斑新生血管(macular neovascularization:MNV):強度近視の約5~10%に発症し,約1/3が両眼性である。自然経過では90%以上の症例が黄斑部萎縮を生じ,視力0.1以下になる。
③近視性牽引黄斑症:後部ぶどう腫という特殊な眼球形状に加え,内境界膜,硝子体,血管による網膜牽引によって生じる後極部病変(網膜前膜,硝子体黄斑牽引,内層分層黄斑円孔,牽引性黄斑部網膜剝離,全層黄斑円孔,黄斑萎縮)のことを指す。強度近視の約1割にみられる。
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