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疥癬[私の治療]

No.5060 (2021年04月17日発行) P.45

和田康夫 (赤穂市民病院皮膚科部長)

登録日: 2021-04-19

最終更新日: 2021-04-30

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  • 疥癬は,ヒゼンダニが皮膚に寄生して生じる伝染性皮膚疾患である。症状は主に夜間の激しいかゆみである。軽症の通常疥癬と,重症の角化型疥癬(ノルウェー疥癬)の2つに大別される。角化型疥癬は集団感染を引き起こすことがある。

    ▶診断のポイント

    疥癬の診断のポイントは,疥癬トンネルを見つけることである。疥癬トンネルは,ヒゼンダニの棲み家である。疥癬トンネルが見つかると,その中からヒゼンダニが見つかる。疥癬トンネルは長さ5mm前後の皮疹で,手足に好発する。手足を精査し,疥癬トンネルを探す。男性陰部には結節が生じる。結節の表面にも短い疥癬トンネルがあり,その先端にヒゼンダニがいる。男性の場合,陰部の結節を目印に探すとよい。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    疥癬の治療には,確定診断が重要である。診断がつかないまま,疑いだけで治療をしても,疥癬でない場合には治らない。確定診断がついてから治療を行うようにする。

    疥癬の治療方針はシンプルである。ストロメクトール®(イベルメクチン)内服あるいはスミスリン®ローション(フェノトリン)外用のいずれかを行う。いずれの薬剤も虫卵には効かないため,卵がふ化する頃合いを見計らって,もう一度投与する。虫卵は3日ほどでふ化すると考えられている。「疥癬診療ガイドライン」1)では1週間間隔の投与が推奨されている。

    ストロメクトール®錠の注意点は,乳幼児や妊産婦には使用できないことである。スミスリン®ローションの注意点は,塗り残しがあると治療に失敗する恐れがあることである。首から下の全身に,塗り残しがないようにくまなく塗布する。顔面や頭部に皮疹がある場合には,それらの部位にも塗布する。

    軽症の疥癬の場合には,ストロメクトール®錠とスミスリン®ローションのいずれを使用してもよい。乳幼児や妊産婦には,スミスリン®ローションを選択する。重症の疥癬,すなわち角化型疥癬の場合には,ストロメクトール®錠とスミスリン®ローションの併用療法を行う。角化が取れ,虫体がいなくなるまで治療を続ける。

    疥癬の駆虫治療は,上記のようにシンプルであるが,やっかいな問題がある。疥癬後瘙痒症である。疥癬は治療を行いヒゼンダニがいなくなっても,なお頑固な湿疹病変やかゆみが続くことがある。それを疥癬が治っていないと判断し,疥癬の治療を続けても効果は乏しい。疥癬後瘙痒症にはステロイド外用薬が有効である。逆に,ヒゼンダニが残っているときにステロイド外用薬を使用するのは,疥癬に対しては逆効果である。治療方針の見きわめには,ヒゼンダニがいるかどうかの診断技量が問われる。ヒゼンダニが残っていれば疥癬の治療,ヒゼンダニがいなくなっていれば湿疹の治療となる。

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