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【識者の眼】「『ワーク・エンゲイジメント』と『バーンアウト』」小林利彦

No.5060 (2021年04月17日発行) P.67

小林利彦 (浜松医科大学医学部附属病院医療福祉支援センター特任教授)

登録日: 2021-03-30

最終更新日: 2021-03-30

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2020年12月に厚労省から「医師の働き方改革の推進に関する検討会 中間とりまとめ」が提出され、医師の時間外労働規制に「A水準」「B水準」「連携B水準」「C水準」が設けられたことはかなり周知されたように感じるが、限度時間を超えて労働させる場合に求められる追加的健康確保措置に関しては十分認識されていない。特に、一月あたりの時間外・休日労働が100時間を超える前に行う「面接指導」については、面接指導実施医師に必要な講習等の内容が具体化していないことや、面接指導等を行う際の流れが確立していないことで現実感がない状況にもある。

実際には、中間とりまとめの別添資料でもある「長時間労働の医師への健康確保措置に関するマニュアル」で大きな方向性が示され、長時間労働の医師に対し面接を行う際のポイントとして、「勤務の状況」「睡眠負債の状況」「疲労の蓄積の状況」「心身の状況」等を確認する際の評価指標(労働者の疲労蓄積度自己診断チェックリスト、睡眠負債の状況を評価する質問票等)や客観的手法(アクチグラフ、精神運動覚醒検査〔PVT〕)などが紹介されている。個人的に注目しているのは、同マニュアルに記載のある「ワーク・エンゲイジメント」と「バーンアウト」という視点である。バーンアウト(燃え尽き)という概念は「長時間にわたり人に援助する過程で心的エネルギーが絶えず過度に要求された結果、極度の疲労と感情の枯渇を主とする症候群」と定義づけられるのに対して、ワーク・エンゲイジメントは「仕事に誇りややりがいを感じている」(熱意)、「仕事に熱心に取り組んでいる」(没頭)、「仕事から活力を得ていきいきとしている」(活力)の3つがそろった状態であるとされる。なお、「仕事への態度・認知(快・不快)」と「活動水準(+・−)」の二軸からなる4領域には、ワーク・エンゲイジメントとバーンアウト以外に「ワーカホリズム」と「職務満足感」という領域も存在するが、医療従事者のあり方を考えるうえで興味深い。

近年、ワーク・ライフ・バランスの重要性が叫ばれているが、ワークかライフの2者選択をする限り、理想的な解決には至らない気もする。やはり、「仕事の要求度」と「仕事の資源の充実度」から見た動機づけプロセスに絡めた「個人と組織の活性化」が必要である。タスクシフト/タスクシェアの推進も大切だが、ICTその他の設備投資にも配慮した職場環境の改善努力が望まれる。

小林利彦(浜松医科大学医学部附属病院医療福祉支援センター特任教授)[医師の働き方改革]

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