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オンライン資格確認3月下旬からスタート─初期費用“全額補助”も導入は3割強にとどまる【まとめてみました】

No.5056 (2021年03月20日発行) P.14

登録日: 2021-03-19

最終更新日: 2021-03-19

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健康保険のオンライン資格確認が3月下旬からスタートする。オンライン資格確認は、全国約22万の病院や診療所、薬局において、マイナンバーカードのICチップを医療機関・薬局の窓口で読み取り、ネットワークを介して資格情報の有効性を確認する仕組み。政府は初期費用を基準額まで全額補助するなどの推進策を講じているが、顔認証付きカードリーダーの申し込み件数は目標の6割を大きく下回っている。本欄ではオンライン資格確認の概要とメリット、現状の課題について解説する。

オンライン資格確認の流れは図1の通り。マイナンバーカードを使った確認では、患者がカードを専用のカードリーダーにかざし、顔認証機能付きのカードリーダーであれば、同時に来院しているのが被保険者本人で間違いないかを確認。それができない場合は、スタッフによる目視や暗証番号の入力で本人確認を行う。マイナンバーカードを保有していない患者の場合でも、保険証の記号番号など最小限の入力で資格情報を取得できる。

 

現在行われている月1回の健康保険証の確認では、本人確認や保険資格の有効性までは確認できず、一定数の資格過誤によるレセプト返戻が生じており、返戻処理にかかる事務作業とコストが医療機関・保険者双方に発生している。新型コロナウイルスの感染拡大による医業収益の悪化や働き方改革の影響もあり、オンライン資格確認導入による医療事務の大幅な効率化が期待されている。

レセプト返戻削減や受付業務効率化の効果も

資格過誤によるレセプト返戻の削減効果以外の主なメリットは、①保険証の入力作業の効率化、②来院前に事前確認が可能な一括照会、③薬剤情報や特定健診情報の閲覧─の3点。

保険証の入力については、現行では受付で健康保険証を受け取り、保険証記号番号や氏名、生年月日、住所などを確認しながら入力する必要があり、受付スタッフのメイン業務の1つになっている。また入力する間、待合室で患者を待たせることになる。オンライン資格確認を導入することで、マイナンバーカードを提示する患者の場合、最新の保険資格を自動的に取り込むことができるため、受付業務の効率化と患者の待ち時間短縮につながる。

②の一括照会は、事前に予約している患者の保険資格が有効かどうかを来院前に確認することが可能になる。保険資格が資格喪失などの理由により無効である場合、受付時に資格確認をすることで資格過誤によるレセプトの返戻の削減効果が期待できる。

薬剤情報・特定健診情報の閲覧が可能

③の薬剤情報・特定健診情報の閲覧は、診療の質の向上に直結する大きなメリット。患者の意思をマイナンバーカードで確認した上で、有資格者が閲覧できるようになる。特定健診情報は2021年3月、薬剤情報は21年10月から閲覧可能。

また災害時は特別措置として、マイナンバーカードによる本人確認ができない場合でも薬剤情報の閲覧ができるようになるため、カルテやお薬手帳を紛失してしまった被災者に対し、適切な医療を継続して提供することが可能になる。

ランニングコストの負担が導入の足かせに

医療機関がオンライン資格確認を導入するまでの流れは図2の通り。必要になる主な機器は「資格確認機器」「資格確認端末」「顔認証付きカードリーダーソフト」の3つとなる。これに加えレセプトのオンライン請求システムも導入する必要がある。現在厚労省は、レセコン改修などの初期導入費用への財政支援措置として、診療所に対しては21年3月末までに顔認証付きカードリーダーを申し込むと無償で1台のリーダーを提供、オンライン資格確認導入に伴うレセコン改修やパソコン購入などの費用についても42万9千円を上限に実費を補助するなど実質負担ゼロで導入可能な措置を講じている。ただし4月以降は補助率が75%に引き下げられるため注意が必要だ。

顔認証付きカードリーダーの申し込み率は2月21日時点で32.8%。内訳は病院42.6%、医科診療所24.6%、歯科診療所27.0%、薬局50.5%。国は3月下旬の本稼働時の申し込み率の目標値を6割程度に設定しているが医療機関は遠く届かない状況だ。理由の1つはランニングコストの問題。初期費用の負担は少なくても、システムのランニングコストは毎月固定費としてかかってくる。

ベンダーによる高額見積の問題も

このほか問題視されているのが一部のシステムベンダーによる高額な見積だ。補助上限を大幅に超え、医療機関が不信感を抱く見積が提示されるケースが散見されている。

またマイナンバーカードの普及率が低いため、保険証での資格確認と並行してクリニックの運営を行う必要があることから模様眺めの医療機関も多いようだ。オンライン資格確認で閲覧できる情報は薬剤情報と特定健診情報に限定されているが、今後は手術や移植、透析、医療機関名といった項目も追加される予定。地域医療における有用なツールとなることは間違いなく、導入へのハードルをどう解消していくかが課題となりそうだ。


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