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不登校児の腹部症状に桂枝加芍薬湯,小建中湯

No.5055 (2021年03月13日発行) P.45

千葉浩輝 (東邦大学医療センター大森病院東洋医学科)

田中耕一郎 (東邦大学医療センター大森病院東洋医学科准教授)

登録日: 2021-03-11

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【不登校の中でも緊張しやすく腹部症状を有する児に,軽度の鎮静鎮痙作用を有する桂枝加芍薬湯,小建中湯が有効である】

2018年発表の文部科学省調査では,少子化で子どもの総数は減少しているにもかかわらず,不登校児の総数は増えつつある1)。不登校の原因には,いじめや学業不振など様々あるが,その一部に,朝の消化器症状により登校に支障をきたし,不登校となるケースがある。平日朝になると腹痛,便秘や下痢等を伴い,トイレに長時間こもる,あるいは公共交通機関で途中下車しトイレへ駆け込むなど,通学困難になっている例である。明らかな原因が自覚されなくとも,精神的ストレスが身体に表現されていると考えられる。

漢方では,心身相関に対し,多くの選択肢が存在し,半数以上に効果を認めたとされる2)。桂枝加芍薬湯もその1つで,15~75歳の過敏性腸症候群患者による無作為化割付群間比較試験では,下痢型の腹痛に対し有効であったと報告された3)。不登校で精神的ストレスによる腹部症状を伴う場合も類似病態であると考えると,有効な治療と考えられる。桂枝加芍薬湯に膠飴を加えた小建中湯が小児の腹部症状によく使われ,より虚弱で緊張しやすく,消化器症状をきたしやすい者に適応とされる。今回提示した症状のほかにも,朝の頭痛やふらつき等の起立性調節障害でも症例報告があり,通学可能となる例がみられる。不登校児増加という問題に,漢方が貢献できればと考える。

【文献】

1)文部科学省HP. [http://www.mext.go.jp/]

2)地野充時, 他:日東洋医誌. 2018;69(4):350-8.

3)佐々木大輔, 他:臨と研. 1998;75(5):1136-52.

【解説】

千葉浩輝,田中耕一郎  東邦大学医療センター大森病院東洋医学科 *准教授

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