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伝染性膿痂疹(とびひ)[私の治療]

No.5055 (2021年03月13日発行) P.34

中村善雄 (慶應義塾大学医学部皮膚科学教室)

登録日: 2021-03-12

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  • 角層下の細菌感染により水疱や痂皮を形成する。臨床的に水疱性膿痂疹と痂皮性膿痂疹にわけられる。水疱性膿痂疹は黄色ブドウ球菌の感染であり,表皮内水疱をきたす。痂皮性膿痂疹は,連鎖球菌または黄色ブドウ球菌との混合感染が病因である。

    ▶診断のポイント

    【水疱性膿痂疹】

    乳幼児~学童期に多い。夏季に保育園・きょうだい間などで集団発生するのが典型である。顔,四肢など外界との接触・搔爬しやすい箇所に多い。黄色ブドウ球菌の感染により,表皮剝離酵素が細胞接着因子デスモグレイン1を分解することで瘙痒を伴う小水疱を形成,拡大し弛緩性水疱・びらんとなる。細菌を含む水疱内容物が付着することで,他の部位・または他者に“飛び火”していく。湿疹や虫刺症,小外傷の搔爬が細菌のエントリーにつながる。細菌培養にて黄色ブドウ球菌が検出される。

    【痂皮性膿痂疹】

    年齢・季節を問わず,アトピー性皮膚炎患者に多い。水疱形成は目立たず,固着した痂皮を圧迫すると膿汁が排出する。発熱,咽頭痛,所属リンパ節腫脹など,全身症状を伴う場合がある。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    非常に軽症な症例は外用だけで軽快する場合もあるが,連日しっかりとシャワー・石鹸洗浄を行った上で原則内服治療を行う。

    水疱性膿痂疹では,黄色ブドウ球菌を標的としてセフェム系を中心としたβラクタム系抗菌薬の内服を行う。そのうち2~4割は市中感染型MRSAによる膿痂疹であるが,院内感染型と異なり薬剤感受性が比較的保たれているものも多く1),セフェム系薬で経過が良好な場合は必ずしも変更する必要はない(多くの症例では結果が出る頃には痂皮化している)。効果が乏しい場合は,薬剤感受性の結果に応じてホスミシン®(ホスホマイシンカルシウム),ミノマイシン®(ミノサイクリン),ニューキノロン系薬などへの変更あるいは追加を検討する。水疱性膿痂疹の場合は小児が多いが,ミノサイクリンは8歳未満では歯牙の着色・エナメル質形成不全,一過性の骨発育不全のリスク,多くのニューキノロン系薬は15歳未満では関節障害のリスクがあり,禁忌である。近年トスフロキサシン,シプロフロキサシンなどの薬剤が小児への適応を獲得したが,少なくとも第一選択として安易に使う薬剤ではなく,使用にあたっては慎重に判断すべきである。

    痂皮性膿痂疹には,連鎖球菌,黄色ブドウ球菌ともに有効な内服薬を用いる。ペニシリン系薬(β-ラクタマーゼ阻害薬配合),新経口セフェム系薬が第一選択となる。重症例では溶連菌感染後糸球体腎炎を合併する可能性があり2),溶連菌が同定された場合は治癒後も1週間程度治療継続が必要である。

    外用は,フシジン酸,ニューキノロン系薬(オゼノキサシン,ナジフロキサシンなど)を塗布する。滲出液が多い部位には亜鉛華単軟膏を重塗布し,ガーゼで被覆する。また,瘙痒が強く搔爬してしまう場合は抗アレルギー薬を併用する。

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