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【識者の眼】「コロナを抑えるために(藪睨み提言)」邉見公雄

No.5049 (2021年01月30日発行) P.54

邉見公雄 (全国公私病院連盟会長)

登録日: 2021-01-20

最終更新日: 2021-01-20

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1月7日夜8時、BS放送で寅さんを見ている。寅さんの時代は良かった。私が住んでいる京都も近畿2府1県の知事と共に緊急事態宣言の発出を国に要請したところである(執筆時点)。本連載もコロナ一色であろうが、やはりこれしか書けない。書いても現実が改善する筈もなく、無力感の愚痴となることをお許しいただきたい。

まず国の対応である。感染者数等の発表や自粛要請、これだけで感染者が減少しないことは医者でなくともわかること。神頼みかウイルスの自滅待ち? またPCR検査の少なさ、保健所やICUの少なさ、医師や看護師の過重労働、これらは長年にわたる医療費抑制政策や効率至上主義の新自由主義の弊害が露出したものである。医療や教育は、空気や水と同様に社会的共通資本である。私は長く公立病院に関わってきたが、いつも100m競走のように全力疾走して収支はトントン。とにかく病院の医療費は安すぎる。医療安全や最新機器、アメニティ、これらのために多くの人員や設備が必要であるが、これらの費用の伸びに比べ診療報酬はほとんど伸びていない。今回のコロナでは、現状では存続が無理と国が指摘した430余りの公立・公的病院のうち少なくとも80程度の病院がコロナ患者に対応している。東京に住んで数字や地図で導き出した案と地方の現実との乖離。保健所の統廃合や病床の削減に力を入れてきた政策。これを今一度立ち止まって省みる時であろう。

コロナ対策として2つほど私見を述べたい。1つは東京五輪の延期か中止である。春夏の甲子園(高校野球)を止め、鹿児島国体や滋賀国体も延期。東京五輪の方がリスクが低いとは到底思えない。私が育った四国の田舎では、村に災いがある時に祭はしないし、お客は招かない。台湾やニュージーランドがほぼ鎮静化したのと大違い。経済を重視しすぎ海と空の港を閉じるのに遅れをとり、結局銭失いになっている。2つ目は東京の“7密(政・官・財・報・法・教・皇)”をバラすことである。特に教育。最高学府の大学が過密で、農学や水産学まであるのは不可解である。学生だけで52万人、浪人や院生を含めると故郷徳島県を超えるとも。若者の無症状感染も相俟ってこれで終息は覚束ない。分都や一時的遷都もこの際考えるべきである。

決して御屠蘇気分で書いたのではない。昨年2月に幻冬舎より自費出版し菅政権の誕生も的中させた「令和の改新 日本列島再輝論」をお読みいただければご理解いただけること必至である。

邉見公雄(全国公私病院連盟会長)[新型コロナウイルス感染症]

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