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行動変容に取り組む医療者の心の持ち方─行動を変えない患者にイライラしてしまう![プライマリ・ケアの理論と実践(86)]

No.5046 (2021年01月09日発行) P.12

菅家智史 (福島県立医科大学医学部地域・家庭医療学講座講師)

登録日: 2021-01-07

最終更新日: 2021-01-06

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SUMMARY
行動変容に取り組む医療者には「患者の行動を変える」ではなく「患者が変わることを支援する」関わりが求められる。行動変容には患者からの医療者への信頼が大きく影響するため,日頃から信頼を積み重ねることが患者の行動変容につながる。

KEYWORD
行動変容
これまで形成されてきた行動をより望ましいものに変容させていくこと。健康行動の行動変容の分野では,医学はもちろん心理学,最近では行動経済学などの知見も用いられるようになってきている。

菅家智史 (福島県立医科大学医学部地域・家庭医療学講座講師)

PROFILE
福島県会津若松市出身。福島県立医科大学卒業後,北海道勤医協中央病院にて臨床研修・総合内科研修。福島県立医科大学にて家庭医療専門研修・大学院博士課程を修了。大学教員として研修プログラム運営・教育に従事。

POLICY・座右の銘
段取り八分仕事二分

1 行動変容がなぜ求められるのか

現代の医療は急性疾患に対する医療から慢性疾患・リスク管理へと役割がシフトしてきている。患者の生活習慣は慢性疾患・健康リスクに影響を及ぼすため,我々医療者は患者の生活習慣に対する介入を行っている。しかし,日々の臨床現場で出会う患者はなかなか行動を変えないのではないだろうか。今回から5回のシリーズで,我々医療者は行動変容が必要な患者とどのように関われるのか,いくつかのヒントを提供できればと考える。

2 思うように進まない行動変容

CASE:45歳男性。高血圧で定期通院中。BMI 30の肥満あり。間食に菓子パンを食べることをやめるよう前回の外来で指導。

医師(以下,):次の方どうぞ。調子はどうですか?
患者(以下,):いやー,いつも通り変わりないですねぇ。
:今日測定した体重はどうでしたか?
:また太っちゃってましたねぇ。
:前回お話した菓子パンの間食,やめてないんじゃないですか?
:いやー,やめられないですよ。
:血圧も上がってきているし,全然痩せないし,これじゃ脳梗塞や心筋梗塞になりますよ! あれだけやめなきゃだめって言ったのに…。
:そんなこと言ったって。腹減るんだからしょうがないんですよ。
:じゃあ,もうやめなくていいです。薬出しときますから。

単純化して誇張したシナリオであるが,著者自身も含め,読者にも似たような経験はあるのではないだろうか。患者の行動は変わりそうになく,医師もついイライラしてしまったのだろう。我々医療者はこのような患者とどのように関わることができるのだろうか。

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